"火中の栗"に常務を送り込む、東電の深謀 数土新体制が打った意味深な一手

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とはいえ、今のままでは同社の存続自体が危ぶまれることに変わりはない。原電が黒字決算を維持しても、その分は東電など電力会社に“見返りのないコスト”として計上され、最終的には電気利用者にツケ回される。再稼働のメドのないまま、こうした支援をいつまでも続けられるわけはない。もはやその限界を超えつつあるともいえるだろう。

原発再稼働に向け支援体制を強化

こうしたタイミングで東電が常務を派遣するのは、原電の経営立て直しに本腰を入れるという意思表明にほかならない。その方法論は現時点では定かでないが、既存原発3基の再稼働に向けて支援体制を強化するのが狙いだろう。

たとえば敦賀2号機について、あくまで活断層ではないと主張して逆転を図る原電を理論的、技術的に側面支援したりすることが考えられる。規制委への審査申請に向けて地元自治体への事前説明を行っている東海第二発電所についても、地元や規制委への対応などで協力の余地を探っているかもしれない。いずれにせよ、東電は数土新体制の下、自らの柏崎刈羽原発をはじめ、原発再稼働の取り組みをますます強化しようとしている。

一方、原電の将来に関しては、既存の原発運営から手を引き、「廃炉専門会社」へ転換するという案や、敦賀3、4号機の建設予定地に大規模な火力発電所や再生可能エネルギー発電所を建設するといった案なども、一部有識者の間で指摘される。その場合には、国の支援も含めて、原電の経営体制の抜本的見直しが必要となるだろう。

原電の将来が、日本の原子力政策の行方に大きな影響を与えるのは間違いない。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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