ニューヨーク市の死者数は4月4日までの31日間で、例年の2倍を突破した。
これは同市全体の死者数で、ここには新型コロナウイルスが直接の死因となったもののほか、心臓発作やがんなどほかの死因によるものも含まれる。
新型コロナが重症化して死ぬような人は、感染が広がらなくてもどのみち死んでいたとする見方もあるが、それを覆すデータだ。まず現在の統計では、コロナに起因する死者数が実際よりも少なくカウントされている可能性がある。次に通常なら防げたような理由から死亡する人が増えた可能性もある。あるいは、その両方の可能性もある。
心臓発作や脳卒中で死ぬ人が増えている
死亡例に関する詳細なデータをリアルタイムで収集することは難しく、最も確からしい数字でも(それすら不完全なものだが)、最大2週間のタイムラグが生じる。つまりこの数字には、ニューヨーク市で新型コロナによる死者数が過去最高を更新した4月上旬の数字は含まれていない。
現在、多くの人が感染拡大防止のため自宅にとどまっており、交通事故死などは減っているもようだ。しかし、それ以外の原因で死亡する人が、それ以上に増えているとみられる。
全体の死者数が増加した理由としては、病院が過密状態となり、救急システムに過大な負荷がかかっていることに加え、人々の不安が高まったことが考えられる。通常の状況なら命を取り留めていたかもしれない心臓発作や脳卒中、その他の疾患による死者が増加した可能性があるということだ。
「コロナの被害規模はわれわれの想定を上回るかもしれないが、間接的な影響もわれわれの想定を上回るかもしれない」とイェール大学医学部の心臓外科医、ハーラン・クラムホルツ教授は語る。教授がとくに憂慮しているのは、心臓に問題を抱えた患者がウイルス感染を恐れて受診を避けていることだ。「つまり(ウイルスの)全体の犠牲者数はもっと大きくなる」。
本記事では、アメリカ国立保健統計センター(NCHS)の暫定データに基づくニューヨーク・タイムズの分析、および疾病対策センター(CDC)とニューヨーク市保健局の時系列データを用いた。2000年1月以降、ニューヨーク市内の死者数を月次で追ったものだ。統計間で死者数の計上方法に違いがあるため、データには若干の調整を加えた。