東京都多摩ニュータウン−−高齢単身者を支えるコンビニ「御用聞き」 一人暮らし増加が変える街の風景
そこはかつて「夢の街」と言われた--。高度成長期、全国に次々と建設されたニュータウン。不燃のコンクリート住宅、ステンレスのキッチン、そして緑の多い街並み。当時のサラリーマンにとって、ニュータウンは夢の場所だった。
それからおよそ40年。ニュータウンをめぐる状況は一変した。入居当時働き盛りだった住民が高齢化。子供たちも次々と街を離れ、老夫婦や高齢者のひとり暮らしが増えている。
東京の多摩ニュータウン。1971年、最初に入居が始まった多摩市の永山・諏訪地区には、40平方メートルから50平方メートルという狭小な集合住宅が並ぶ。5階建ての団地にはエレベーターがなく、高齢者にとって住みづらい環境だ。
建物の老朽化が進み、一部の団地では建て替え計画が浮上している。だが、多摩市への建て替えに関する補助金申請は、まだ1件だけ。建て替えには住民の8割以上の賛成が必要な場合があり、住民の総意をまとめる難しさを裏付けている。
そんな中、人々の暮らしぶりはどうなっているのだろうか。日常生活に密着しているコンビニエンスストアを通じて、その変化を探ってみた。
変わる売れ筋商品
ペットフードが人気
永山・諏訪地区から北へおよそ1キロメートル。多摩市和田町に一軒のコンビニエンスストアがある。
セブン‐イレブン和田3丁目店。周囲を公営団地で囲まれたニュータウン内の店舗だ。同店がある和田3丁目は、住民約1300人のうち実に40%が60歳以上の高齢者。多摩地区の中でも特に高齢化の進んだエリアにある。
業界最大手のセブン‐イレブン・ジャパンが多摩ニュータウンへ出店を始めたのは81年。地域の変化に合わせて売れ筋も変わってきた。
以前は500円以上のボリューム系弁当が人気だったが、お客の高齢化や健康志向を背景に、「ねぎ塩豚カルビ弁当」など小ぶりな400円以下の弁当が人気だ。ほかに洋菓子よりも和菓子が好調で、どら焼きや大福などオリジナル和菓子「和匠庵」の品ぞろえを増やしている。
ペットフードも売れ筋だ。多摩和田3丁目店では、店内の陳列棚一つをすべてペットフードに充てている(左ページ写真)。通常の倍以上の品ぞろえで、ここまでの展開はあまり例がない。特に人気が高いのが猫用。ひとり暮らしが増える中で、猫を飼う高齢者が増えている--。セブンの棚からは、そんな事情がうかがえる。
この店の大きな特徴は、スタッフがお客の要望に応じて出向く「御用聞き」を続けていることだ。セブンでは2004年からこの御用聞きを全店で奨励しているが、実は多摩和田3丁目店では、すでにそれ以前から同様のサービスを始めていた。