【産業天気図・建設業】10年度まで「長雨」、新政権運営次第で景気二番底なら「土砂降り」も覚悟

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予想天気
  09年10月~10年3月    10年4月~9月

建設業界は2010年9月まで、変わらず「雨」が続く。さらに、新政権の予算方針や円高進行により国内景気の二番底があれば、「土砂振り」にもなりかねない状況だ。

09年10月~10年3月は、1年半~2年前からの潤沢な受注工事が収益計上される時期であり、各社が直近決算で示した今10年3月期の業績予想を大きく下回ることはありえない。上場各社の今4~9月期(第2四半期)の公表データでは、足元10月以降は前年の同時期に比べると工事のボリューム減少は明らか。鹿島<1812>、清水建設<1803>、ハザマ<1719>のように、減収に伴い営業利益予想を下方修正した企業はさらなる下振れ懸念がないとは言い切れない。

だが、鹿島や清水建設など主要各社は、公共事業や民間土木・建築の需要先細りを折り込み、収益管理を強化している。具体的には人員や拠点数の削減や、利幅の薄い工事の請負を避けるといった内容で、いわば「我慢の経営」だ。このため、多少の減収であれば営業利益率には大きくは響かないことが期待できる。こういった経営改善効果が出ているのは、前田建設工業<1824>や若築建築<1888>といった企業だ。

だが中期的な環境は厳しい。民主党は公約で「コンクリートから人へ」予算配分を見直す方針を明示している。実際すでに、自民党政権時代の補正予算で組まれた高速道路4車線化の見送りや、港湾整備事業費のカットといった“小ナタ”が振るわれている。来10年度の政府本予算では、公共事業費を前年度比14%削減するとした概算要求をさらに削り込む可能性もある。官庁工事での土木・建築の需要落ち込みは長期化するとみるべきだろう。

その場合、10年4~9月期の各社業績は、受注額や売上高、営業利益のいっそうの落ち込みが想定される。加えて、為替差損や工事損失引当金、貸倒引当金の計上額が増える余地もあり、最終損益はスーパーゼネコンや準大手一部で均衡圏、それ以外の規模の小さな各社は軒並み赤字という事態への想定も要する。小規模企業の中には信用不安を背景に存続危機に瀕する例も出うるほか、業界横断的にさらなる人員削減や事業部門の身売りといった話も浮上するだろう。

この環境にあって数少ない明るい材料は「エコ建築物」。民間部門を中心に温室効果ガス大幅削減を図った改修や建て替え案件が増える余地がある。土木予算に厳しい新政権も、地方経済の雇用対策に直結する公共土木工事を防災や環境という名目で再評価し、予算配分を増やす可能性がある。

(古庄 英一)

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