グーグルの強みは、単なる「巨大なテクノロジー企業」ではなく、「デジタルプラットフォーマー」であることにあります。デジタルプラットフォーム上には必然的に、あらゆるユーザーのデータが蓄積されていきます。このデータこそ、デジタルプラットフォーマー最大の武器であり、財産となります。検索サービスを通してデジタルプラットフォーム上に蓄積されたビッグデータを広告ビジネスに生かし、大きな利益を上げる。
基本的には、これがグーグルのビジネスモデルです。当然データが多ければ多いほど有利になるため、あらゆる手を尽くしてユーザーを増やし、データを集めようとします。このとき、ユーザーを増やす極めて有効な手段が無料の検索サービスであることは言うまでもありません。
一方で、ユーザーがグーグルなどデジタルプラットフォーマーへ提供する個人データに関して、さまざまなリスクが存在します。個人が提供したデータはどのように使われるのか、必ずしも明らかではありません。デジタルプラットフォーマーが個人データを占有すること自体、不安に感じる人も少なくないでしょう。もし個人が特定されるかたちでデータが外に出てしまえば、プライバシーが侵害されるリスクがあります。そのリスクが顕在化したのが、2018年に起きたフェイスブックの個人データ流出事件です。この事件を機に、プライバシー保護の機運はにわかに高まりました。
「データの利活用」と「プライバシーの保護」の両立
グーグルの『COVID-19 コミュニティモビリティレポート』の公開に先立って、アメリカ政府とフェイスブックやグーグルなどテクノロジー企業が、COVID-19対策を目的に、スマートフォンの位置情報や移動履歴の共有について協議中であるとの報道がなされました。
確かに、グーグルの『COVID-19 コミュニティモビリティレポート』が当局支援を目的の1つとしているように、テクノロジー企業が持つユーザーのビッグデータは公共の福祉にも貢献するはずです。社会全体でみれば、COVID-19など感染症対策だけでなく、公共交通や環境保護などにも広く役立つでしょう。その反面、ビッグデータを占有するテクノロジー企業が公権力をもつ政府に情報提供で協力することには、個人のプライバシー侵害のリスクが伴うことも否定できません。
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