インドネシア唯一の鉄道メーカー「INKA」の実力

日本と関わりは深いがスイスメーカーと提携

それゆえ、アジアでの生産起点を模索していたシュタドラーとINKAはベストマッチングだったのである。

1990年代にボンバルディアの技術供与で大量にノックダウン生産された通称「Holec」。元々は非冷房だったが、一部は冷房化と韓国宇進の協力で機器更新して蘇った。現在は運用離脱中(筆者撮影)

海外案件に入札するには実績も必要だ。シュタドラーと組めばその要件も大幅に下がるうえ、技術力も吸収できる。外資参入には高い障壁を設けているインドネシアであるが、今回に限っては手放しに喜べたはずだ。シュタドラー本社での提携調印に出席したアイルランガ工業相は満面の笑みを浮かべていた。

歴史的には日本と密接に関わってきたINKAだが、徐々に技術力を身につけ、一本立ちするときも近い。今、まさに岐路に立っていると言えるだろう。INKAは1国に絞らず、多数の国々のメーカーと接して比較検討し、シュタドラーとの提携という1つの答えを見出した。

問われる日本の立場

INKAは日本と縁が深いとはいえ、独立した子どもに親がとやかく言うのは筋違いだ。そもそも日本の開発援助の基本は、被供与国の自立である。いつまでも発展途上国扱いするのは禁物だ。インドネシアはインドネシアなりのプライドがある。戦後、東南アジアを中心として多くの支援を続けてきながら、今になって日本の立ち位置が危うくなるケースが多いが、構図としては同じだろう。

問題は、自立した子どもとどう接するかだ。その部分を日本は国策としてまったく考えていなかったのではないだろうか。あとはメーカーにお任せすると言うのは簡単だが、国としてインフラ輸出を掲げている中、無責任ではないだろうか。

2008~2013年にかけて50両が製造された液体式気動車KRDI。写真は冷房付きの後期タイプ(筆者撮影)

インドネシアは鉄道分野でまだまだ伸びしろがあり、都市鉄道、高速鉄道共に多くのプロジェクトが予定されている。日本も引き続き何らかのかたちで支援することになると思われるが、このような状況のなかで、今後は日本から新車をそのまま輸入することも難しくなってくるだろう。鉄道だけではない。日本車の天下と呼ばれていた自動車業界ですら、当地での風向きは変わりつつある。

INKAのマディウン工場とバニュワンギ工場でどのような仕事の分担がなされるのかわからないが、あくまでシュタドラーと提携するのはバニュワンギであると報じられている。それなら、マディウン工場の活用次第で、日本にもまだ商機はあると言えるのかもしれない。だが、シュタドラーのように大英断を下せる日本メーカーは果たしてあるだろうか。

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