インドネシア唯一の鉄道メーカー「INKA」の実力 日本と関わりは深いがスイスメーカーと提携

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KAIはしばしばインドネシア国鉄と邦訳されることが多いが、建前上は民営会社(株主は国)であり、独立採算制を取っている。そのため効率的な運営を求められており、KAIは車種に応じた最良のメーカーと組んで車両の導入、メンテナンスを実施している。その結果、営業車両の稼働率はほぼ100%という東南アジアの鉄道としては驚異的な実績を誇っているが、近年インドネシア政府は国産化比率の引き上げを求めている。

インドネシア鉄道の基本的な長距離列車。CC206形ディーゼル機関車が最新のINKA製ステンレス客車を牽引する(筆者撮影)

輸送力増強のため、KAIは2013~2016年にかけてGEから150両のCC206形機関車を導入(台車はインドネシアの鋳物会社PT.Barata製)しているが、それでもなお、KAIは複線化事業の進捗などで機関車が根本的に不足している。車両増備が急務だが、理由は明らかにされていないものの、GEへの追加発注ができないと言われている。

一方、INKAは2019年11月に国内向けの特急型気動車のイメージパースと設計諸元を報道公開(ただし、KAIはこの特急気動車を購入する計画はないと反論している)するなど、政治的な臭いも漂わせている。

輸出拡大を望む政府

インドネシア政府がここまで国産比率の向上にこだわるのは、単にナショナリズムが強い国民性というだけでなく、近年の慢性的な貿易赤字体質による理由も大きい。

かつてOPECに加盟していたインドネシアだが、今や石油輸入国に転じており、石炭、天然ガスなどを輸出して石油を輸入するという状況が続いている。さらに、電気機器や機械類の輸出はまだまだ少なく、一方で内需の拡大に対応すべく輸入が増加している。これが赤字の要因である。

政府にとって輸出額の拡大は喫緊の課題であり、特に輸入品の国産品への代替えを工業省は重点政策として掲げている。しかし、インドネシア製品は質の割に価格が高い。これは周辺国の洋服などと比べてみてもよくわかる。製造業関係者からよく言われることだが、基礎的レベルの技術者は多く存在するが、上級者がほとんどいない。内需があまりにも大きく、そこそこの商品、悪い言い方をすればいい加減な商品であっても企業は食っていけるという、ある意味幸せな状況がずっと続いてきたからである。

それでも政府は強気で、今後の成長戦略として「インダストリー4.0」を掲げている。製造業活性化の起爆剤として期待されており、2030年の世界10大経済国入りを目指すとしているが、現状を見る限りではかなり難しいだろう。その点はさすがに政府も理解しているはずだ。

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