インドネシア唯一の鉄道メーカー「INKA」の実力

日本と関わりは深いがスイスメーカーと提携

電車の製造を再開したのは2011年で、ドイツ復興金融公庫の助成により40両を製造した。

ドイツ復興金融公庫からの助成で2011年に製造された通称「KFW」。205系の増備でジャカルタ首都圏からは撤退し、今後ジョグジャカルタ地区に転用される(筆者撮影)

制御装置はボンバルディア、ブレーキ回りはクノールというようにドイツメーカーの部品を多用した一方、日本をはじめとしたいくつかの国の製品も採用し、特に車体は日本車輌の技術である「日車ブロック工法」に準じた仕上がりになっており、非常に興味深い車両であった。

2017年製のジャカルタ、スカルノハッタ空港鉄道の特急型電車。ボンバルディアとの共同受注。これをきっかけに通勤型の受注も目指すか(筆者撮影)

実は、この車両が以後のINKAの設計方針に繋がっており、状況に応じて最良のパーツを各国から揃えて組み立てるという事例が増えた。

急激に生産両数が拡大したのは2016年以降で、KAIの老朽客車の置き換え需要も多かったものの、バングラデシュからの大量受注を果たしたことが大きかった。合計すると1000両弱である。加えてこの時期には2018年開催のアジア競技大会需要もあり、ボンバルディアと共同でジャカルタ空港アクセス鉄道(Railink)から特急型電車を受注したほか、スマトラ島の都市パレンバンのLRT車両の製造も手掛けるなど、客車以外の分野でも力を付けてきた。

ちなみに、パレンバンLRT車両は中国製部品が多用され、主制御器一式を中国中車が供給していたこともあり、INKAの次なるパートナーは中車なのかと関係者を沸かせた。ところが、次いで受注したジャカルタの郊外型LRT(LRT Jabodebek)向け車両は設計を大きく変更し、初めてスペインCAFの技術を採用した。

いずれにせよ、インドネシア国産メーカーの部品のみでの車両製造は難しく、海外メーカーとの協業は不可避であった。これまでの流れから見ると、パートナーはボンバルディアが有力のように思えたが、INKAが選んだのはシュタドラーだった。

国内の貨車・客車はほぼINKA製

ここで、現在のインドネシアの鉄道事情を簡単に説明しておきたい。

現在、インドネシア国内で鉄道が営業運転しているのはジャワ島とスマトラ島だ。ジャカルタ特別州傘下の都市鉄道(MRTJ・LRT Jakarta)を除くと、すべてインドネシア鉄道(KAI)及びその子会社(KCI・Railinkなど)による運行で、総延長は4000kmに及ぶ。

KCIが運行するジャカルタの通勤電車が日本の中古電車によって賄われているのはご存じの方も多いと思うが、現在KAIが保有するほぼすべての貨車・客車はINKA製で、さらにそれらを牽引する機関車はほぼすべて(先述のCC204形除く)がアメリカ製(軸重制限の都合でジャワ島はGE製、スマトラ島はGM製)という興味深い棲み分けがなされている。

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