中国と韓国の感染抑制に見た「都市封鎖」の表裏 「マスク不要論」は中国専門家トップが否定

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マスクをしたとしても、感染者から他の人への感染を防げるだけだと主張する人もいるが、鍾南山の考えはノーだ。「新型肺炎の予防のカギは、距離を取ることとマスクを着用すること。マスクは、自分を感染から守るうえで重要だ」と話す。

なぜマスクが必要なのか? 鍾南山は、「マスクを着用することで、飛沫感染という主要な感染経路を遮断できる」と語る。

最近では、チェコやオーストリアなどが世界保健機関(WHO)のガイドラインに従うことをやめ、大衆が公共の場でマスクを着用するよう奨励し始めた。

アメリカも政策の転換を検討しているが、マスクの供給がいっそう厳しくなることを懸念し、まずは医療従事者の保護を優先したいとしている(訳注:アメリカ現地時間4月3日、疾病予防管理センター(CDC)は、公共の場での布マスクなどの着用を奨励し始めた)。

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鍾南山は、中国での経験に基づいて、感染が拡大した重点地域を封鎖し、社会的距離を保ち、マスクを着用することが、ウイルスのさらなる感染拡大を防ぐ最善の方法だと確信している。

これとは異なる手法で成果をあげたのが韓国だ。

都市封鎖なしで感染拡大食い止めた韓国

4月2日の国際会議には、ソウル大学公衆衛生大学院のクォン・スンマン教授も出席し、韓国が感染拡大を比較的早く食い止めた経験を紹介。都市封鎖を行った中国とは異なり、「店はすべて開いているし、空港も稼働している」という。

「韓国の戦略は、早めに行動することだ。過度な影響を心配するべきではない。過度な影響も、効果不足よりはましだ。

1月末、韓国の感染者は10人に満たなかったが、政府はすぐに行動を開始。検査試薬を準備するため、生産許可を発行して生産を急いだ。そして、大規模な検査を実施した。当時は、このやり方が正しいと確信していたわけではなかった」(クォン)

大規模な検査によって感染者数は激増した。同氏によると、これによってより多くの人々が病院で治療を受けられたという。政府も、重症者は入院治療を受け、軽症者はホテルなどで隔離治療を受けていると明らかにした。

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クォンはさらに、韓国が感染者の追跡に関して、非常に急進的で有効な方法をとっていると説明。感染者のスマートフォンやGPS位置情報などを調べ、各種の監視カメラ映像によって行動履歴を追うのだという。

「西側の国家では不可能なことかもしれないが、感染拡大をうまく抑止できた。韓国は都市封鎖を選択せず、大きなコストをかけて感染者を追跡した。都市封鎖にもメリットはあるが、経済的な代償が大きい」(クォン)

韓国ではマスク着用や手洗いの励行、距離の確保など、社会的な呼びかけも広く行われている。同氏によると、「韓国では、マスクなしで大通りを歩いていると多くの人に指をさされ、マスクを着用させられる」という。

(財新記者:周東旭)
※敬称略。4月3日7:28配信記事より抄訳

財新編集部

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2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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