インド「コロナで理性失う市民」の常軌逸す言動 感染者への嫌がらせや特定、デマが横行

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サトヤキさんによると、彼と妻はソーシャルメディアで攻撃の標的となり、母親と祖母は怖くて家に帰れず、病院に避難している。

「どうしてここまで憎しみに駆られるのか理解できない」。サトヤキさんは米国からロイターに語った。新型コロナの感染拡大で渡航が制限されているため、サトヤキさんはインド国鉄の職員として長年働いた父親を見送る最後の儀式のために帰国することもかなわなかった。

隔離者リストが拡散

インド政府は20日、ソーシャルメディア企業に対し、偽情報や感染拡大に関する未検証のデータの拡散を取り締まるよう求める勧告を発布。政府高官も動員してフェイクニュースの摘発に乗り出した。

インドの民間ファクトチェック企業2社がロイターに明らかにしたところでは、インドで感染者が最初に確認されて以来、ソーシャルメディアで誤情報やフェイクニュースが急増している。

「ニュースチェッカー」の発行人ラジネイル・カマス氏は、大きな政治イベント期間中の誤情報の急増ぶりにそっくりだと指摘する。インド各地の言語で問い合わせも殺到しているという。「だれもが『これは本当ですか』と聞いてくる」

オンラインのプラットフォームを使い、リスクが高いとされる地域から最近帰った人や、感染者と接触した可能性のある人を特定しようとする動きも見られる。

南部カルナタカ州当局は、複数地域で隔離されている人々のリストをオンラインに載せ、それが対話アプリ「ワッツアップ」の地元グループでシェアされている。

住所も記載されているこのリストを元に、ユーザーが自分の郵便番号を入力して近所で隔離されている人がいないか調べられるウェブサイトも登場した。

28日夕方時点で、インドで確認された感染者は909人、死亡者は19人。サミルさんは西ベンガル州で死亡した1人目の新型コロナ患者となった。

インドの保健当局は、国内の感染者は感染拡大地域への渡航歴がある人々や、そうした人々と接触した人々におおむね限られていると発表している。

しかし5月半ばまでに10万人以上が感染する可能性があるとの予測もあり、老朽化したインドの医療体制に厳しい重圧がかかる恐れがある。

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