高給キーエンス出身の彼が退職し起業する理由 日本屈指の優良企業を離れ、求めた自由とは
晴れてキーエンスの社員となった井上さん。営業担当の同期は100名以上と非常に多かったといいます。そのほとんどは、同社の扱う製品に興味があるというよりも、自分と同じマネーモチベーションの高い人々でした。
キーエンスは、「仕組み化」が非常に徹底された企業として知られています。企業体制にもそれは反映されていて、8種類の事業部が独立した企業のように稼働しています。事業部内はさらに5〜10人程度のチームに細分され、製品やエリア別に販売を担当することとなるのです。
「同じ事業部の同じ製品を販売するチームで、20年以上所属する人もいました」
キーエンスの営業スタイルは、取り扱い製品によってもかなり変化します。井上さんはキーエンスにとって大口となる、500〜700万円の測定器・顕微鏡などを担当していました。営業先は代表取締役社長や専務など、決済権を持つ上長クラスにアプローチすることが最重要だったといいます。
一方、1つ数万円の小口商品を扱うチームの営業先は、工場のラインといった現場を支えるキーマン。工場のライン新設や機器更新のタイミングで、センサーなどの商品をすぐ提案できるよう、長期的な関係構築が求められます。
商品特性によって、営業チームが編成され、販売促進チームが資料を作成する。こうした完全分業での体制が、キーエンスの特徴でした。
気になる給与の変遷は、「2年目には年収1000万を超えた」そうです。キーエンスは賞与が年4回支給され、各事業部、チーム、メンバーの成績で金額が決定。社員には独自の「クラス分け」が設けられ、A、B、Cとランクに応じて、賞与が決まったと井上さんは振り返ります。
「営業担当は現場メンバー、プレイングマネージャー、マネージャー、事業部長と役職が変わりますが、昇進にもクラス分け制度が影響します。個人の成績はもちろん重要ですが、プレイングマネージャーは30代が多く、さらに席が少ないマネージャーは、ほとんどが40代、50代でした」
30代のプレイングマネージャーの年収は、3000万円以上になるのだとか。明確に定められた年功序列とクラス制度が、社員のモチベーションにつながっていると井上さんは言います。
数字至上主義に見えるキーエンスの「意外な素顔」
キーエンスという会社は給与を上げるため、とにかく売らないといけない。営業成績を達成しなければいけない数字至上主義の会社と、井上さんはイメージしていました。しかし、実際に見た姿は少し異なりました。
「入社から半年、新入社員は20時までの帰社が定められています。その後も入社3年目までは、じっくり育てていこうという姿勢が強い印象でした」
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