聖火リレーがスタートする直前が、今回の延期を決めるタイムリミットだったともいえる。決まる前はランタンで灯して車で運ぶという、およそ聖火リレーとは言えない、ただ運ぶだけの方法も出ていたが、やらずに済んだ。
聖火はギリシャのオリンピアで太陽光から採火されると、オリンピックの閉会式で空に返すというのは以前紹介した(『意外と知らない「オリンピック聖火」の長い歴史』)。
現在は福島県内で保管されており、スタート地点として予定されたJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)で1カ月ほど展示された後、東京都内に展示される予定という。延期になったから、もう1度採火し直すということではない。
すでに大方決まっていたことを1年後までにどう組み直すか、ということが大会日程の決定で動き出せる。ほぼ同日程になったことで、スケジューリングはしやすい。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大次第で進み方はどうなるかはわからない。
聖火を見たいと思っても、外出自粛ではままならない。まして、緊急事態宣言が出て移動が難しくなれば、聖火は保管場所でただ燃えているだけになる。東京都の感染者数は増えており、「オーバーシュート(爆発的感染拡大)」までぎりぎりの状態が続いている。いつ出てもおかしくない。
国難で政府にも迅速な対応が求められる
3月28日に行われた安倍首相の会見では、以前の会見で質問を受け付けなかった江川紹子氏の質問を受けた。
自粛要請によって厳しい経営状況に置かれた文化、芸術分野への助成や金銭補償の必要性について質問され「税金による損失補填の形で補償することはなかなか難しい。そうではない補償の仕方がないか考えている」と答えた。
「悪夢の民主党政権」と国会答弁で口にする首相は、その根拠を「倒産件数などファクトだ」としている。民主党政権時代に起きた東日本大震災では確かに企業倒産が相次いだ。
調べてみたら、東京商工リサーチの調査データでは、震災関連の倒産は2020年2月までずっと発生しており、累計は1946件(2020年2月末時点)とあった。企業規模などの詳細はわからないが、飲食関連や宿泊関連が上位だった。
原因に違いはあるが、同じ「国難」には違いない。安倍首相は「国難」という言葉も使う。
スポーツや音楽などのイベントの中止を余儀なくされた主催企業・団体はもちろん、街では飲食店や観光関連の企業の経営が逼迫している。同じ東京商工リサーチの調査データでは「新型コロナ関連倒産」は既に25件が経営破綻しているという。アメリカではラグビー協会が破産申請したという報道もあった。
「考えている」うちに、倒産件数というファクトは増えていく。「悪夢の○○」とならないように、2021年の東京大会日程を決めたように、政府もコロナへの対応策をスピード決断すべきだろう。
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