国内営業部に「外国人を配属した会社」の大失敗 「営業のために方言を学ぶのはちょっと…」

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しかし、そのことを上司に相談するも「そういう決まりだから」ということで、ほかの部署へ異動させようという話などにはならなかったのだとか。

その会社では、英語やフランス語を生かせる部署もありました。会社もあらかじめ彼女の英語やフランス語の能力が高いことを知っていて、それに期待したうえでの採用だったはずなのです。

なのに「ルールだから」という理由で、外国語を使わない国内営業部に配属させてしまいました。日本語の方言がまったく聞き取れず、さらに日本で育った人と比べると敬語もたどたどしいため、彼女はなかなか契約にこぎつけることができず、営業成績は他の日本人と比べて芳しくありませんでした。

せっかく自分の能力が生かせると思った企業で、「電話の相手が聞き取れない方言ばかり」の部署に配属され、さらには敬語にもイチイチ先輩から細かい指導が入ったといいます。「敬語が上手な営業の人」「日本の田舎の方言も聞き取れる人」なら、地元の日本人を雇ったほうが効率的なのでは? と、思うのは私だけではないはずです。

ニッポンの会社では、このように外国人を能力に合わない部署に配属したり、英語の話せない日本人が「国際部部長」だったりするのですから、効率重視の外国企業と競争する際に負けてしまうのは当たり前です。

能力のある人でも「まずは下っ端の業務から体験させる」という体育会系的な社員の使い方をしてしまうため、ニッポンの会社は早々に外国人に愛想を尽かされる傾向にあります。

デンマーク人の彼女も、「これはやってられない。私は茨城弁のプロではないし、営業のために方言をワザワザ勉強するのはちょっとね……」と言いサッサと外資系企業に転職してしまいました。ちなみに給料も外資系のほうがいいそうです。

本末転倒な日本の「体育会系文化」

考えてみれば、英語とフランス語が堪能な人に、茨城弁での営業をさせたうえ、「外国人だからやっぱり日本の方言がわからない、敬語がなってない」などと「新人教育」を毎日チクチクやるのは、「ダレ得」でもありません。

『体育会系 日本を蝕む病』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

優秀な人材をそれに見合う部署に配属せず、「外国人だから」ということを連発するのはパワハラだと思います。「新人は皆同じ」「新人は皆雑巾がけ」とばかりに、この手のやり方を「平等」だと信じてやまない体育会系思考の闇は深いと言わざるをえません。

MBAを持った優秀な外国人が入ってきても「まずは現場から!」と地方の工場に配属させたり、マルチリンガルな人を国内営業部で日々方言を聞き取ることに使ったり。

これでは、新人の大坂なおみさんに、「テニスがうまいのはわかるけど、まずは先輩の球拾いからお願いね」と言っているようなもの。そして球拾いしているうちにテニス自体に興味をなくしちゃうかも。まさに本末転倒のニッポン流・体育会系。大坂なおみさんは、もしかしたらアメリカにいたからこそプロになれたのかもしれません……。

サンドラ・ヘフェリン コラムニスト

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Sandra Haefelin

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、多文化共生をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)など著書多数。

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