「テレビ報道」ネット隆盛だからこそ必要な理念 この先ページビュー至上主義の誘惑に勝てるか

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インターネットニュースの過去は、必ずしも輝かしいものではありませんでした。取材もしない中身のない薄っぺらな記事、感情に訴えかけて共感と閲覧数だけを狙う記事、釣り見出しの数々……。ぽっと出の新興メディアならいざ知らず、新聞協会に加盟する伝統メディアまで、背に腹は代えられないとばかりに、こんな“報道”に手を出しました。

テレビの総接触時間は、2019年に153.9時間とカテゴリーの中では最長ですが、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを合算したインターネットの接触時間は205.4時間に及び、すでにテレビは追い抜かれている状況です(図)。2019年にテレビ広告費が、インターネット広告費に追い抜かれたのは周知のとおりで、民放連は「マスメディアの中で最後まで持ちこたえていたテレビも、インターネット広告にパイを奪われる傾向が顕在化しつつある」という見方を示しています。

(出所)『GALAC』2020年5月号

加えて、2020年から同時配信が始まることを考えると、テレビ業界がインターネットに進出して行かざるをえない状況を後押ししています。やがて環境への変化を求められるのは、テレビ業界の「ジャーナリズム」ではなく、「ビジネス」のほうなのです。

過去に繰り広げられたネットメディア競争の中で、私たちは1つの貴重な教訓を学びました。「持続できる健全なビジネスがあってこそ、健全な報道が成立する」ということです。テレビ業界は、新聞業界に比べると変化は穏やかなほうで、今日明日にも経営危機に陥るような瀬戸際感はありません。確かに、今すぐ直ちにテレビ局の経営が傾くような状態にあるわけではありませんが、中長期的にみると、テレビ業界が決して安泰でないのもまた事実でしょう。

「ページビュー至上主義」の誘惑に勝てるか?

ドラマはともかくとして、報道番組の現状はどうでしょうか。テレビ局が取材したあらゆるニュースがインターネットに存在し、それらの記事すべてがポータルサイトに配信されているわけではありません。有料か無料かを問わず、新聞社のようにほとんどすべての記事・コンテンツがインターネットで見られる状態にありません。このような状況をみると、テレビ業界の報道コンテンツのインターネット対応は、手つかずにあると言えます。

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