ヤマダとビック、相次ぐイメチェン戦略の成否 ECの強化だけでなくクオリティの追求も急ぐ

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日本橋三越本店内に新店舗を構えたビックカメラ。富裕層向けに高級家電を売る(記者撮影)

大量の商品を低価格で販売することが強みだった家電量販店業界が、その姿を変えようとしている。率先して推し進めているのは業界トップのヤマダ電機と2位のビックカメラだ。

ビックカメラは2月から東京・日本橋の日本橋三越本店に新店舗をオープン。スーツに身を包んだビックカメラのスタッフが、富裕層が多い三越の外商客向けに200~300万円する大型テレビや10万円以上する掃除ロボットなど高級家電を販売する。

変化の背景には、人口減少に伴う市場縮小とEC(ネット販売)伸長による来店客数の減少に歯止めがかからない現実がある。ピークの2010年に10兆円を誇った市場規模は、現在7兆円前後に落ち込み、各社とも数字は明かさないが既存店来客数も「この10年で半減している」(業界関係者)とみられている。

コンシェルジュが同席して販売

3月上旬、ビックカメラ日本橋三越店の中央に設置されたテーブルでは、スーツ姿のスタッフが客の話に丁寧にうなずく姿があった。スタッフの説明に納得をした客が商品購入を決めて会計を済ませると、スタッフはエレベーターまで見送った。スーツの着用、テーブルに腰掛けての商談、客の見送り。いずれも既存店にはない光景だ。

店内の一角には、数百万円のテレビや掃除ロボットなどが並ぶ「クオリティタイムゾーン」がある。高級ソファに腰掛ける初老の夫婦が、自宅のインターネット接続やテレビの配置、家具の必要性などについてスタッフに相談をしている。夫婦の隣には、三越のコンシェルジュ(ベテラン販売員)が同席。時に夫婦に代わって、夫婦の好みや求めている家電製品についてビックカメラのスタッフに説明する。

三越には家具・リビングフロアがある。ここで家具購入やリフォームを検討する客は、三越スタッフに案内される形でビックカメラのクオリティゾーンを訪れる。三越伊勢丹のエムアイカードを通じて客の購買履歴や生活スタイル、趣味・嗜好まで豊富な情報を把握している三越のコンシェルジュが、客のニーズをビックカメラ側に伝える仕組みだ。それを受け、ビックカメラは客が考える生活シーンの最適解を提案する。

最大の特徴は、ホームトータルサポート「ビックカメラ スーパーサポートPREMIUM 」。この有料会員になった客が家電を購入すれば、自宅に赴き、配送設置や初期設定、使い方の習得までサポートする。メニューによってはその後も定期的にメンテナンス(状態確認、簡易清掃)に赴く。

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