日本橋三越「テナント誘致」を積極化する狙い ビックカメラ開業、賃貸方式への転換が加速

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2月に東京・日本橋三越本店にオープンしたビックカメラの店舗(記者撮影)

2月7日、東京・日本橋の日本橋三越本店の新館6階に、家電量販店・ビックカメラの新店舗がオープンした。子供服売り場を改装し、ビックカメラを誘致した。百貨店首位の三越伊勢丹ホールディングスが家電量販店をテナントとして入居させたのは初めてのことだ。

「顧客の嗜好が多様化し、デジタル化が進む時代を迎えている。お客さんに来店してもらえるように、店舗の魅力を高めていかなければならない」

オープンに先立って行われた記者会見の席上、三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長は、欧米の百貨店では約10年前から高級家電が売られていることを引き合いに出しながら、そう語った。

日本橋三越の新館を大きく改装

オープン初日の夕方、新しい売り場は老若男女でにぎわっていた。売り場の一角にあるソファに座ってじっくりと話せる商談スペースでは、大型8K有機ELテレビのパンフレットを広げながら、スタッフの説明に耳を傾ける婦人の姿もあった。ビックカメラによると、「三越のお客さんにも好意的な声をいただいた。特に、大画面テレビに関する問い合わせが多かった」という。

この新店舗は店舗面積が1200平方メートル。都内の大型店ともなると1万平方メートルを超えることもあるビックカメラの中では、比較的小さい店舗になる。ただ、百貨店内ということもあり、60万円を超える電動マッサージチェアやスピーカーなど高価格品を中心にそろえ、パナソニックの美容家電など既存店舗にはない「百貨店限定モデル」も販売する。販売員は通常の赤いベストではなく、スーツを着用。店内BGMもビックカメラの宣伝文句の代わりにジャズ系の音楽を流し、全体的に高級感を打ち出した演出を凝らしている。

ソファに座ってじっくりと話せる商談スペース(記者撮影)

日本橋三越本店は現在、新館の5階と7階は改装中だ。2004年に完成した新館は地下2階から10階までの商業エリアのうち、地下1階と2階の食品・レストランフロア、10階のレストランフロアを除くほとんどのフロアが婦人服を中心とする自主運営売場(百貨店が商品企画や品ぞろえを決めて運営する売場)で構成されていた。新館にはシャネルなどの高級ブティックやケイト・スペード ニューヨークなど婦人ファッションブランドが入居するが、本館との違いを明確に打ち出せていなかった。今後は趣味系の店舗など、多岐にわたるテナントを誘致し、賃貸形式のビジネスモデルの割合を徐々に増やしていく。

三越伊勢丹のIR担当者は「新館の5階以上のフロアは、基本的には賃貸方式での運営を考えている。来2021年3月期に順次開業していくことになる」と説明する。

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