ヤマダとビック、相次ぐイメチェン戦略の成否 ECの強化だけでなくクオリティの追求も急ぐ

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通常、接客をした店舗スタッフと配送設置業者は別だが、本サービスの特徴は、接客をしたビックカメラのスタッフ本人が客の自宅に赴くところにある。販売した後も担当者が最後まで責任を持つシステムだ。

「ソファでの話し合いは時に3~4時間に及ぶ。効率とスピード重視のEC事業者には無駄な時間に見えるかもしれないが、この丁寧な接客こそ、私たちはもっとも重視している」。ビックカメラ日本橋三越の橋本賢太店長はそう語る。ビックカメラは以前から百貨店・デパートのような富裕層向けの店舗づくりを考えていた。そうした中、三越日本橋と方向性が一致し、今回の新規出店が実現した。

ビックカメラは、こうした富裕層向けの店舗について「今後も機会があれば前向きに検討したい」(広報部)としている。三越日本橋店のオープン前、三越の協力を得て接客の研修を行った。ビックカメラとして富裕層向けの接客ができる人材育成も強化していく方針だ。

三越日本橋の店舗で念頭に置いているのは外商など富裕層が中心だが、そこに限らない。家電業界のアナリストは「一定の富裕層ゾーンと、定年退職をして自宅でテレビを見る時間が増える65歳以上のボリュームゾーン。20~30代に比べてECの利用頻度が低く、安いものをECで探して買おうとはしないこのゾーンこそ、今後の家電業界のターゲットになる」と分析する。

ヤマダが受け止めた海外投資家の指摘

業界首位のヤマダ電機も変革を急いでいる。家電量販店が勢力を拡大した1990年代、各社は「他社より1円でも安く売る」ことにしのぎを削った。ヤマダ電機の本拠地・群馬県にコジマが進出したことで勃発した「上州戦争」に加え、カトーデンキ販売(現ケーズデンキホールディングス)が参戦したことで「テレビ1円セール」まで展開された。

この「YKK戦争」(ヤマダ、コジマ、カトーのイニシャル)には、さすがに公正取引委員会が「待った」をかけたほどだった。激安競争と出店攻勢でしぶとく勝ち抜き、業界ナンバーワンに登り詰めたのがヤマダ電機だったが、近年は「安さ」と「量」だけでは消費者ニーズをつかめなくなっている。

ヤマダ電機の業績は2010年度の売上高2兆1532億円、営業利益1227億円をピークに下落を続け、2014年度には営業利益が200億円を割り込んだ。当時、ヤマダは海外の投資家からこんな指摘を受けた。

「ヤマダはカニバリ(共食い)を起こしている。早く解消したほうがいい」。

市場が縮小、成熟し始めているにもかかわらず、出店攻勢を続けていたため、ヤマダの店舗同士で客を奪い合っているのではないかという投資家からの声だった。「海外投資家の指摘を機に出店攻勢をやめ、既存店を魅力あるものに変えていく戦略に切り替えた」と、ヤマダ電機の岡本潤取締役は言う。

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