マンション販売の最前線「モデルルーム」再考論 コロナ長期化でオンライン接客の導入も

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ギャラリーには現在増設中のものを含めてコンセプトルームが2つ。この2部屋を通じて、都内の計7物件を販売する。新宿のほか、有楽町にあるオフィスビルにも同様のギャラリーを構える予定だ。都内の物件は2つのギャラリーで販売され、物件ごとのプレハブ製モデルルームは作らない方針だ。

ギャラリークレヴィア新宿の様子。コーヒーにフリーWi-Fiなど、喫茶店と変わらないサービスだ(記者撮影)

これまでのように建設予定地の近くにモデルルームを構えることは、地元住民がふらりと立ち寄れたり、建設予定地を案内できたりするメリットがあった。だが、「都心の物件ほど、地元だけでなく広域から購入検討者が来場する。物件の近所よりも、ターミナル駅に構えたほうが効率的だ」(伊藤忠都市開発・都市住宅事業第一課の谷豊氏)。

入り口部分には自由に利用できるカフェスペースを設けた。通常のモデルルームに比べて商談色は薄まる一方、マンションが建つ街の魅力や自社ブランドの発信拠点として活用し、マンションにまつわるイベントも開催する。「マンション購入の有無は別にして、顧客とフランクに話ができる空間にしていきたい」(谷氏)。

コロナが後押し「脱モデルルーム」

姿形を変えるモデルルームだが、足元で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響は少なからず受けている。「3月に入ってから客足が落ちている」(大手デベロッパー)ほか、住友不動産は都市部の、三井不動産は全国のモデルルームで新規営業を停止している。人との接触が忌避される状況は、対面営業が中心のモデルルームにとっては逆風だ。

コロナウイルスの影響で、モデルルームでの案内会を延期するケースが出てきている(記者撮影)

そんな中、三菱地所レジデンスは3月23日、都心部のマンション13物件で「オンライン接客」を導入すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大により来場のキャンセルが増えていることから、導入に踏み切った。

モデルルーム自体は営業を続けるが、客が希望すればテレビ会議のように遠隔で商談を行う。肝心の「部屋」はVR(仮想現実)で閲覧する形を採るため、モデルルームに足を運ぶ必要はなくなる。すでに複数件利用の申し込みがあるという。

現在のところ動きはないが、コロナウイルスの収束が遅れれば、デベロッパー各社はモデルルームの一時閉鎖を検討することになるかもしれない。顧客ニーズの多様化や疫病を契機に、マンションの販売手法も再考の動きが広がっている。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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