田中将大とノムさん。最強の師弟ストーリー TBSプロデューサーが見た、2人の天才

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デビュー戦後に聞きたい質問

現地時間2014年4月4日、田中はトロントで行われるブルージェイズ戦でメジャーデビューを飾ることが決まった。現地に駆け付ける予定の横山には、注目しているポイントがある。

「将大のお父さんに聞いたのですが、マウンドの後ろで軽く飛び跳ねることがあります。その仕草をすることで、体の力を抜こうとしているみたいですね。普段の試合でも何度か行いますが、2012年3月の東日本大震災復興支援ベースボールマッチの台湾戦では、いつもより回数が多かったようです。お父さんは『復興がテーマの試合で日本代表の先発を任された責任感や、プレッシャーで固くなっているのかな』って言っていました。だからメジャーのデビュー戦でどれくらい飛び跳ねるのか、注目しています。そんな話は本人に言ったことがないし、『お父さんがこう言っていたよ』と伝えたこともないですけど(笑)」

楽天デビューから7年間の田中投手の軌跡をまとめたDVD(発売元:TBS、販売元:ポニーキャニオンⓒRakuten Eagles)

日米の熱視線が注がれるマウンドを降りた試合後、横山が聞いてみたいのはこんな質問だ。

「『ぶっちゃけ、ビビった!?』って聞いてみたいですね。まぁ絶対、『ビビりましたよ!』なんて言わないってわかってるんですけどね(笑)。メジャーのマウンドに上がっている姿を見ると、長く見続けてきたからこそ、感じることが僕にもあると思います。それが何か、変化なのか、逆にまったく変わっていない姿なのか。ただ、ひたすらに楽しみですよね、ホントに」

はたして田中は屈強なメジャーリーガーに対し、どこまで外角低めにストレートを投げ切ることができるのだろうか。日本では“原点”とされるが、メジャーでは決して安全なコースではない。リーチの長い彼らにとって外角低めは十分にバットが届く範囲であり、パワーのある打者なら軽々とスタンドまで持っていくことができる。

「オープン戦では、どれくらいアウトコースの低めに投げられるかと見ていました。昨年はかなり精度の高かったボールなので。そこにいままでどおりに投げられるのか、どれくらいメジャーで通用するのか、注目しています」

田中が日本最高投手に登り詰める道程で、磨きをかけたアウトコース低めという“原点”。その球筋に、野村と横山は特別な思いを重ねている。

田中投手のメジャー初登板の裏舞台と、隠された感動秘話が紹介される、スポーツドキュメンタリー『今夜解禁!石橋貴明のスポーツ伝説…光と影』はTBS系列で、4月6日(日)夜9時から放送

 

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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