フィットとN-BOX、比較で見えるホンダの迷い N-BOXオーナーが新型フィットで感じたこと
試乗の前段として、ホンダが商品コンセプトとした「心地よさ」を理解するところから始めた。なにせ、この「心地よさ」なるものが、あまりにもつかみどころがない。新型フィットのテレビCMを見ても、なんだかフワフワして、商品性がつかみにくいと感じていた。
そこでまず訪れたのは、ホンダの青山本社ビル1階「Hondaウェルカムプラザ青山」で開催された「ここちよさ展」(2020年2月13~28日)だ。
聴覚、視覚、触覚、嗅覚、それぞれのコーナー展示で自分が心地よいと感じるものを2つ選び、用紙に記入。その結果から、志向にあったドリンクを提供するとともに、新型フィットのおすすめグレードを提案してくれる、という催しだ。
全国各地にある科学館などでも、こうした人の感性を考えるタイプのイベントが行われるが、「ここちよさ展」は展示内容も考察に関する裏付けについても、かなりレベルが高かった。
ホンダの本社関係者によると、「ここちよさ展」で用いた手法は、本田技術研究所の感性価値企画室の業務として実際に使っているものから抜粋したという。少々大げさかもしれないが、「ここちよさ展」は筆者自身の“モノの見方”を見つめ直す、いい機会となった。
ただし、「ここちよさ展」が新型フィットの購入動機に直結するかは、個人差が大きいと感じた。
「心地よさ」を感じない…
「ここちよさ展」を体感した直後、会場内に置かれていた新型フィットに触れてみたのだが、カタログにある「心地よい視界であること」「座り心地がよいこと」「乗り心地がよいこと」、そして「使い心地がよいこと」のうち、停止状態ではわからない「乗り心地」を除く3つの「心地よさ」を、直感的に感じ取ることができなかったからだ。
視界については、従来の半分以下の厚さの極細フロントピラーの採用により、コンパクトカーとしては圧倒的に見晴らしがいいのだが、それすらも「心地よさ」という感情をはっきりと抱くことはできなかった。
一方、N-BOXの場合、2011年の第1世代の登場時に初めて実車を見た際、心地よさではなく「驚き」を感じた。ヘッドクリアランスの広さ、ロングシートスライドによるシートアレンジの豊富さなど、当時軽ハイトワゴンの二強だったダイハツ「タント」とスズキ「パレット」の使い勝手のよさにホンダのクオリティーが加わったことが、大きな驚きだった。
話を新型フィットの試乗会に戻そう。
最初の試乗車は、「e:HEV HOME(206万8000円)」。走り出した瞬間、思わず「あっ!」と声が出てしまうほど驚いた。フロントガラス越しの景色が、開放的だったのだ。
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