転換期を漂う格闘技界、ブーム再燃を目指す“戦極”の挑戦と厚い壁
新しいファン開拓に全力 ドンキ支援で選手育成も
戦極はメジャー競技を意識した取り組みを加速していく。たとえば、選手が試合前にリングの感触を確かめるリングチェック。「ほかの競技なら試合前の練習は観客の前で行われる」という理由から、開場時間に合わせて公開した。観客は試合を控えた選手の表情を間近に観察することができるようになった。より競技を知ってもらおうと、実物大のリングを会場の外に設置するなど、スケール感を伝える工夫も欠かさない。
ファンとの距離が近いイベントを目指し、ホームページに寄せられた要望はスタッフが目を通し、演出などに反映していく。対戦カードもファンの要望を尊重し、選手にとってリスクの高い試合を実現させた。
一方で、リアリティを追求する路線は、スター選手を生み出しにくい難点を持つ。なにせ、特定選手の対戦カードを有利に組み、スターに仕立て上げる行為など通常のことで、試合中にレフェリーが採点ルールを変更する珍事まで起こる業界である。
そこで、戦極はスポンサーのドン・キホーテを活用し、有力選手の育成に精力的に取り組んできた。「育成選手制度」では、戦極がスカウトし格闘技ジムへの所属が決定した選手には、練習に打ち込む環境が約束される。ジムの入会金や月謝は免除され、練習と両立可能な職場の紹介など、プロ格闘家への道を強力に後押しする異例の取り組みだ。
入場者数は順調だが 地上波獲得が緊急課題
育成選手としてプロになった一人、大澤茂樹選手はドン・キホーテの社員として店舗に勤務している。さらに、ベネズエラ出身のマキシモ・ブランコ選手もWVRのスタッフとして運営上の業務に携わる。現役のうちから企業人としての就労経験を積むことで、ケガや引退後も生活に困らないようにとの配慮もある。