「ベンツ乗りの浪費家」が結婚で到達した新境地 14歳下の「対等な妻」がもたらした価値観

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将司さんは大企業の正社員だけど浪費家で、幸恵さんは社交的なオタク。その本性をお互いがさらけ出したとき、2人の結び付きと補完関係はむしろ強まった。結婚してからの彼らの精神的に豊かな生活がそれを証明している。将司さんは「『アリとキリギリス』のキリギリスみたいだった生活が大いに変わった」と証言する。

「それまでは無駄遣いが多かったんです。似合わない服や使いもしないオーディオを買ってしまったり。結婚してからは、服は妻と一緒に買うようにしています。おかげでモノだらけの生活から脱することができました。モノが少ないと気が楽ですね」

無駄遣いが減り、「いいモノ」だけをそろえられるようになったことだけが結婚の経済的な効用ではない。前妻の古い洋服まで置いてあった4LDKの広いマンションと車を売却し、ローンを完済できたのだ。

残ったお金で小さな中古マンションとスーパーカブを買い、借金のない新婚生活を送れるようになった。スーパーカブは運転を交替しながら2人乗りを楽しんでいるという。なお、2年前に将司さんが東京の子会社に異動になったため、現在は2人で東京都心の賃貸マンションで暮らしている。大阪に残してあるマンションは売却予定だ。

「最高」な東京での新生活

幸恵さんも新しい生活を満喫できている。経済的に安定したのがまずは大きい。結婚のきっかけも幸恵さんが将司さんの扶養に入るためだった。

「付き合い始めてから腰の調子が悪くなり、手術をすることになったんです。私が長く働いていた店はアルバイトにも福利厚生はしっかりとありました。でも、休業補償まではありません。入院したら食べていけなくなると思って、とりあえず結婚して扶養に入れてもらうことにしました。彼のほうも(扶養控除で)税金が安くなります。本当に助かりました」

現在、幸恵さんは専業主婦をしつつ、扶養の範囲内で原稿執筆やセミナー講師などをしている。東京での新生活は「最高」だ。

「古い賃貸マンションですけど、オーシャンビューだし銀座にも歩いて行けます。東京は何でもあるので楽しいですね。関西の友達とも本当に親しい人とは今でもつながっています。何となく一緒に飲みに行っていた人たちとは自然と切れました。

2000枚もあったCDも半分以上は若いバンドマンにあげて、どうしても残しておきたいものはケースを捨ててファイルに収納してあります。以前はCDをたくさん持っていることだけが自分の価値だったんです。いま、彼が私のファンでいてくれて、価値を見出してくれている。だから、CDを捨てて東京に来られたんだと思います」

恋愛とは違い、結婚とは生活そのものなのでキレイ事では済まない。実家も含めた家族としての相性はもちろん、お金や住む場所に関する合意と継続性も重要だ。しかし、それらの基本条件さえクリアできれば、お金やモノは多くは必要でなくなったりする。お互いに承認欲求を満たし合いつつ、知恵と工夫によって質の高い暮らしを目指せるからだ。

本当の意味で「楽」をするために人は結婚をする。あまりに幸せそうな将司さんと幸恵さんの様子を見て、筆者はこの確信を深めている。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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