「インド」のモーターショーで見た意外な車事情 スズキがシェア50%維持も韓国・中国勢が猛追

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今年はドイツの「メルセデス・ベンツ」と「フォルクスワーゲン」そしてチェコの「シュコダ」が出展していた。そんな中で印象的だったのは、フォルクスワーゲンだ。新開発した市販のインド向け小型SUV「タイグン」を世界初公開するなど、インド市場への意気込みが伝わってきた。

「タイグン」はフォルクスワーゲンの新興国向けSUVだ(筆者撮影)

ただし、その出展内容は先進国のそれとは大きく異なる。先進国ではピュアEV(電気自動車)を主張しているフォルクスワーゲンだが、インドではプレゼンテーションが小型SUVと「ポロ」のレース仕様車などが中心で、EVはオマケ的な扱いだった。この国では、まだEVへ方向転換するのは難しいという判断なのだろう。

そんな「EVはまだ早い」という空気は、他のメーカーにもあてはまると感じた。他メーカーもコンセプトカーを中心に一部市販EVもあったのだが、本気を感じられるものではなく、「政府へのおつきあい」というオーラが漂っていた。

で、現実的な次世代車として何を推すかといえば、EVでもハイブリッドでもなくCNG(天然ガス)車が、しばらくのエコカーの本命と考えられている様子。CNG車はすでに数多く流通しており、各社ともそこに力を入れているのだ。

目標は2030年に電気自動車30%

2017年に、インドの政府高官が「2030年にインド国内で販売されるクルマをすべて電気自動車とする」と宣言して注目を集めた。

しかし、同時期に宣言が放たれたフランスやイギリスですら「2040年」だったのに(しかもプラグインハイブリッドなども含める)、それよりも10年早いのはさすが無謀ともいえ、その実現可能性の低さゆえに紆余曲折して現在は「2030年に30%」を目標としている。

とはいえ、充電インフラはまだ整っているとはいえず、しかも今なお電力供給不足による停電が発生する国である。さらにいえば、発電において石炭火力の比率が極めて高い状況でEVを普及させることに、どれだけの意味があるのかも疑問だ。電気自動車普及への道のりはまだまだ長く、そして険しいものとなりそうだ。

しかし、インドは10年以内には中国を抜き、人口が世界1位となると予測される国である。インドの自動車事情が世界に与える影響は、これから無視できないものとなるだろう。

工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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