「インド」のモーターショーで見た意外な車事情 スズキがシェア50%維持も韓国・中国勢が猛追

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そんなマルチスズキだけに、デリーオートエクスポ会場内に構えるブースは大きい。出展した乗用車専売メーカーの中で最大の広さを誇り、王者の風格を見せつけていた。

マルチスズキは、デリーオートエクスポに合わせてコンセプトカーを制作して、ショー開催日にワールドプレミア(世界初公開)を行った。

スズキのコンセプトカー「Concept FUTURO-e(コンセプト・フュートゥロe)」(筆者撮影)

「Concept FUTURO-e(コンセプト・フュートゥロe)」と呼ぶモデルはインド市場を強く意識したもので、日本サイドではなく現地マルチスズキのデザイナーがデザイン。世界的な流行を反映したクーペスタイルのSUVで、パワートレインは環境に配慮して電気モーターとしている。

さらに会場でマイナーチェンジモデルを公開したコンパクトSUV「ビターラ ブレッツァ」の新型や日本でも販売している「イグニス」をはじめ、多くの市販車を展示。日本人としては、日本で販売しているのと同じ名称ながら別設計で車体サイズが異なる「ワゴンR」や、「スイフト」のセダンに相当する「ディザイア」など、親しみを感じつつも日本とは異なる現地向けモデルが興味深いところだ。

日本の「スイフト」を4ドアセダン化した現地モデル「ディザイア」(筆者撮影)

スズキの広報担当者は「現地のニーズに合わせた車種開発を行い、日本では販売していないモデルも設定している。日本の軽自動車である『アルト』のプラットフォームをベースに、インドでデザインや設計を主導して開発した『エスプレッソ』もマルチスズキを象徴するモデル」と言う。

マルチスズキは、比較的リーズナブルなモデルを「アリーナ店」で販売する。加えて「バレーノ」など高価格帯のモデルを取りそろえた「ネクサ店」という高級チャンネルを展開しているのも興味深いところだ。

地元インドのメーカーを追う韓国勢と中国勢

インドには、地元の財閥系自動車メーカーも存在する。「タタモーターズ(以下:タタ)」や「マヒンドラ&マヒンドラ(以下:マヒンドラ)」だ。

マーケットシェアとしては大きく後れを取っている2社だが、マルチスズキに追いつけ追い越せといわんばかりに大きなブースを構えて来場者にアピール。

「タタモーターズ」のコンセプトカー「HBXコンセプト」は生産の準備ができているとアナウンスされる(筆者撮影)

タタは市販に近いコンパクトSUVのコンセプトモデルを初公開し、いっぽうのマヒンドラは、SUVクロスオーバースタイルのオープンスポーツカーという個性的なコンセプトカーをワールドプレミアとして展示していた。

インドの自動車マーケットは、これからも伸びが期待できる。デリーオートエクスポの会場を歩いていると、そんな市場での規模拡大を虎視眈々と狙っている存在が、韓国勢や中国勢であることに気がつく。

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