「児相への支援」はコロナ対策から学ぶべきだ

十分な装備が必須、新人ではなく「専門家」を

社会福祉学マクロにおいて、他分野の学術的知見は非常に重要です。さて、今回のコロナウイルスの対応で重要と示唆されることは以下3点です。

①専門家が罹患してはいけないこと
②新人を投入してはいけないこと
③十分な支援体制が整っていること

これはどの分野でも活用可能なものと考えられます。さて、上記のようなことを日本の児童相談所の職員に当てはめてみましょう。

①専門家が罹患してはいけない
児童福祉司は任用されるにはさまざまな条件がある専門職です。全国に約2800人ほどいます。このうち、2018年度に休職した人が2.2%おり、多忙とされる教員の精神疾患の休職率の4倍ということが判明しました。これは1年間のみであり、「過去の休職割合」や、休職しなくても精神疾患にかかっている職員はさらに多いことでしょう。

3月も末になり各自治体では次年度の配置予定者が出ましたが、児童相談所レベルでみますと、児童福祉司が5人どころか10人以上欠員のところも出ています。さらに昨年の事例では、新採の職員のうち30%以上休職・退職するところもあるなど、過酷な状況です。「専門家が罹患してはいけないこと」においては、精神疾患等に罹患すること、およびそれによる休職退職はさらに残った方々の過酷な重労働を増やします。つまりアウトな状況です。

4月に新人を導入するのは悪手だ

②新人を投入してはいけない
医師は特定の専門家ではありません。トレーニングや実践を重ね専門医として認定されたものが専門家です。医師1年目でDMATや細菌戦の最前線に行くような組織は終わっています。しかしながら児童福祉司は1年目から、ひどいところは4月から実践導入されるのです。知識があって研修制度が整ったとしても、激烈な親対応、機能不全を起こした家庭への対応、見た目は問題行動だけれども実はトラウマ反応をしている子どもへの対応は難しいです。

かつては新人はケースを持たず、ペアとなった先輩がつきっきりで電話の取り方や面接での対応、関係機関との調整などすべてに同行してOJTを行い、一定期間を経てやっとケースが持てる体制の児相がありましたが、今は本当に少なくなってきています。

そのようなOJTをしている児相と、していない(つまりいきなり現場導入)の児相の新人退職率や休職率を調べていますが、結果は明らかです。やはり新人を4月に導入するのは悪手です。しかしそうせざるをえないほど、人手が足りないのはまるでイタリアの新人医師と同等です。

③十分な支援体制が整っている
イタリアでは必要なICUが実際は100分の1しかないため、より若くて可能性のある患者が使えるように、また人工呼吸器の使用についてもトリアージされています。つまり、専門家が必要としている体制が整っていないのです。

日本の児童相談所を見てみますと、子どもを保護するところや社会的養育する資源が足りません。わが国の社会的養護を受けている子どもは約4.5万人ですが、国際比較計算をするとどうやってもわが国は9.3万~20万人の社会的養護が必要な児童がいるはずです。

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