欧州パンデミックに放ったラガルド・バズーカ 金利の抑制へ、大規模国債買い入れが流行か
PEPPの実施期間については2020年末までとされているが「政策理事会が新型コロナウィルスの危機局面が終息したと判断すれば、年末前に終了する」とされている。つまり年末には新型コロナウィルスは終息するというのが大前提になっている。購入対象資産は「拡大資産購入プログラム(APP)で対象とする資産全て」とあるので、国債、社債、地方債、資産担保証券、あらゆる有価証券が対象となる。
しかし、既述のとおり、民間資産には12日に発表済みの1200億ユーロで対応するのだとすれば、基本的には今回発表された7500億ユーロが国債市場へ投入されることになる。発表文には「a new temporary asset purchase programme」とあるので1200億ユーロは今回の7500億ユーロとは別だと思われるが、仮に1200億ユーロが7500億ユーロの内数だったとしても6300億ユーロが国債市場に向かうことになる。それでも十分に巨額である。
なお、これほどの巨額を国債市場に投じるということは当然、ECBのルール上の「issue or issuer limit(発行または発行体の限界)」(銘柄ごとにみて発行残高の 33%の制約が「issue limit」、発行体ごとにみて発行残高の 33%の制約が「issuer limit」)や資本金出資比率(capital key)からの乖離が気になるところである。
すでに膨らんでいる資産の16%に相当する
この点、PEPPはこれまで通り、資本金出資比率に従うとされているものの、あくまで柔軟な運営(a flexible manner)とされており、資産クラスなどをまたいで購入金額のブレは容認されるとの旨が示されている。すでにイタリア国債の保有残高は出資金比率に照らして1.7%ポイント上振れている。これから各国で大型の財政出動が予想されるので、「購入資産が不足してイタリアだけが偏って購入される」といったような事態は和らぐと思われるが、声明文を見る限り、もはや一時的な乖離の拡大は目をつぶるという覚悟がありそうである。
なお、声明文の締め部分には「政策理事会は直面するリスクに対して適切な政策を打つのに必要な程度、自身で課している制約を修正することを考える」とある。出資金比率や「issue or issuer limit」をほごにする覚悟が透けてみえる。ちなみにPEPPでは企業発行の短期債(CP)並びに購入除外されていたギリシャ債も対象となる方針や担保基準の緩和も示されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら