1つ目は弁当販売だ。数店舗が参加し、3月16日に村岡さんが経営するタリーズコーヒーの店頭で弁当の販売を始めた。初日は70食を販売し30分で完売した。本業が飲食店のため、まとまった数の弁当を作るのに慣れていない店もあるが、それぞれが協力しながら販売している。
もう1つの柱はクラウドファンディングだ。お客さんに支援金額と同額の「食事券」を提供し、新型コロナウイルスが落ち着いてから店を訪問してもらう仕組みだ。村岡さんはプロジェクトについて「普段通っている店を、地元で支えようという取り組み」と説明する。
村岡さんは「政府は経済対策として無利子の融資をすると言っているが、これではダメ。売り上げが減っているときは利益が減るのに、減った利益からお金を返さないといけない。目先の運転資金はなんとかなっても、長期戦を乗り切れなくなる。だから、先にお客さんにお金を払ってもらうことで、応援してもらおうと考えた」とも話す。
宅配専用サービスを拡充させる飲食店も
一方、配送体制の強化に乗り出した飲食店もある。渡邊正都さんは、六本木や新橋など7カ所でレストランやカフェを展開するFine Fast Foodsを経営する。もともと渡邊さんの店舗ではウーバーイーツでデリバリーを行っていたが、2月末に価格帯や商品ラインナップを変えて、配送専用の飲食サービスを拡充させた。足元では順調に注文が入っているという。
渡邊さんは中国から団体旅行の入国が禁止され、銀座や浅草の観光客が減っていると聞いた2月初めから「やばい」と思っていたが、その頃はまだ自身の店舗は堅調だった。コロナショックがわが身に降りかかってきたのは、2月下旬、政府が「不要不急の外出やイベント自粛」を呼びかけて以降だ。
大手企業が在宅勤務に入り、懇親会や接待への参加を控えるよう社員に求めるようになると、来店客が半分近くに減った。「通常3、4月は歓送迎会の予約が多く入るが、3月前半はさっぱりだ」と渡邊さんは話す。
渡邊さんが経営するFine Fast Foodsが最初の店を六本木に出したのは、東日本大震災直後の2011年3月。その当時も全国的に自粛ムードが漂っており、苦しい船出だった。だが渡邊さんは、今回のコロナショックのインパクトは震災以上だと指摘する。
「東日本大震災のときは、家にいるのが怖いという人たちが一定数いて、お店に来てくれた。今は逆。外に出るのが怖いという状況だ」(渡邊さん)
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