鉄道においても、鉄道事業者が不特定多数の利用者を画一的に扱う営業規則等の定型約款を準備している。改正後民法第548条の2以下に照らせば、鉄道事業者は利用者に対して利用のたびに営業規則等を表示する必要がある。
そうすると、この民法の規定を貫けば、鉄道利用者は、きっぷを購入する際にあらかじめ出札口や自動券売機で営業規則等の表示を鉄道事業者から受けなければならない(JR東日本の場合:旅客営業規則第5条第1項は運送契約の成立をきっぷ購入時とする)。
ICカード乗車券で改札口を通る場合には、ICカード乗車券による運送契約成立はICカード乗車券で改札機を通ったときなので(JR東日本の場合:ICカード乗車券取扱規則第20条第1項)、改札機を通るときもしくはその前に営業規則等の表示を受けなければならない。
駅やホームページで確認できればよい
しかし、実際の鉄道利用において利用のつど営業規則の表示を受けなければならないとするのは現実的ではない。一方で、営業規則は駅などに備え付けられているし、鉄道事業者のホームページでも比較的容易に確認できる。
そのため、改正後鉄道営業法第18条の2では、実際上の便宜や個々の乗車の際に定型約款を表示する必要性の小ささから、民法第548条の2第1項第2号の特則として定型約款を「公表」していれば足りるものとした。ホームページや駅などで定型約款たる営業規則を公表し、利用者が見ようと思えば見ることができる状態にすればよいこととされたのである(改正後軌道法第27条の2も同様(整備法第304条))。
何気なくIC乗車券で列車に乗っていても、鉄道会社と運送契約がきちんと結ばれているのである。
なお、鉄道法令とは直接の関係はないが、労働者の給与請求権の消滅時効期間の規定でも劇的な変化が生じている。
最近、雇い主(元雇い主を含む)に対する未払残業代の請求が増えているようであるが、これまでは消滅時効が2年とされていたので過去2年分の残業代しか請求できなかった(労働基準法第115条)。
しかし、2020(令和2)年4月1日以降は消滅時効期間を5年としつつ、経過措置として当面の間3年とする、とされる。労働者保護には有益ということになるが、使用者側はこれまで以上に対応が必要であろう。
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