民法「抜本改正」が鉄道規則に与えた思わぬ余波 見つけた紛失きっぷ、いつまで払い戻せる?

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今回の整備法を調べたとき、鉄道関係の法令で改正される法令がないか見てみた。第11章の国土交通省関係の中にそれはあった。第303条と第304条の2カ条である。第303条は鉄道営業法、第304条は軌道法に関するものであった。

まず、整備法第303条では以下のとおり規定されている。

第303条 鉄道営業法の一部を次のように改正する。
第14条中「一年間之ヲ行ハサル」を「之ヲ行使スルコトヲ得ベキ時ヨリ一年間行使セザル」に改める。

現行鉄道営業法第14条は「運賃償還ノ債権ハ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス」と定めている。1年間運賃の払い戻しを請求しなければ消滅時効により請求できなくなるというものである。これを受けて鉄道事業者の運送約款では、紛失などの理由できっぷを再発行した場合で元のきっぷが見つかったときの払い戻しの請求を1年に限るとしている例もある(例:JR東日本旅客営業規則第269条など)。

今回の変更は、「1年経ったら請求できない」ということではまったく変化はない。変化があるのは「行使することができるときから」(1年)という起算点が明確に設けられたことである。これはどういう意味か。

今回の民法改正では時効の部分も改正対象になったことは先に述べたが、改正民法では時効により権利が消滅する場合の起算点が2つ設けられた。「権利を行使できるときから」(10年)という客観的な時点と、「権利を行使することができることを権利者が知ったときから」(5年)という主観的な時点である(改正後民法第166条第1項第1号第2号・ただし例外あり)。改正前民法では消滅時効の起算点は「消滅時効は、権利を行使することができる時から(消滅時効完成へのカウントが)進行する」(改正前民法第166条第1項)とのみ定められていた。

客観的な起算点を明確にした

鉄道営業法に定める運賃償還の債権に関する消滅時効の規定も民法とまったく関係なく存在しているわけではない。

そこで今回民法の規定の文言に合わせて、「1年間行使しなかったとき」という文言から「権利を行使できるときから1年間行使しなかったとき」という客観的な起算点を明確にした。

きっぷを再発行した場合、きっぷが見つかりさえすれば再発行の分の運賃の返還を請求できる。その意味では再発行をした時点から払い戻しを求める権利を取得しているといえる。したがって、その時点から1年権利を行使しなかったときには権利の行使ができなくなるということになる。

主観的な起算点は消滅時効期間が長くなりすぎるのを調整するものであるが、運賃償還の消滅時効期間は1年と短いことから主観的な起算点は設けられなかったものと思われる。

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