安倍首相「五輪開催」をトランプに頼る無理筋 日本のコロナ対策を米国はどう見ているのか

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「ダイヤモンド・プリンセス号での失態の間は、日本の能力に関して大きな懸念があったと思う」と、アメリカ上院の高官は話す。

「だが、率直に言って、日本にとって有利に働いてきたのが、最近の緊急問題の多くが、最初は中国、今はヨーロッパと他国で起きているので、日本はなんとか大きな注目や批判をかわすことができている、ということだ。これまで日本がアメリカに『輸出』した症例があまりないということも、この問題を2国間で取り扱ううえでプラスに働いている」

日本はそれほど「目立っていない」

それでも、日本の検査水準の低さについては疑問が残り、安倍首相はオリンピック開催にこぎつけるために、危機的状況を実際より軽く扱いたかったのではないかという疑念が生じている。韓国とは異なり、日本はこの危機の管理状況の模範とは見なされていない。

「アメリカ国民は韓国の大規模検査の効率の高さと透明性や、シンガポール、台湾そして香港が、中国と地理的に近いにもかかわらず、感染の発生を大部分防いでいることに大変感銘を受けている」と、ブルッキングス研究所東アジア政策研究センター所長のミレヤ・ソリースは語る。

「よくも悪くも、日本はこのような国際的な比較において目立っていないので、クルーズ船の事件の後、日本はアメリカ国民にとって見えにくくなっている」

結局のところ、アメリカ人の注目は、日本が経験していることよりも、トランプ政権のこの疫病への対応に注がれている。安倍首相がますます自暴自棄になっているトランプの好意をいまだに大いに頼りにしているように見えることを考えると、皮肉なことに、これが日本に有利に働いている。

モチヅキ准教授はこう語る。「日本に対する批判は確かにもっともなものだが、アメリカに比べれば、日本はそれほどひどくは見えないのだ」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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