安倍首相「五輪開催」をトランプに頼る無理筋

日本のコロナ対策を米国はどう見ているのか

同氏は安倍首相に関する人物伝の著者でもある。「日本がこのアウトブレークを封じ込めたとしても、大会の開催で再び簡単に感染の拡大を引き起こす可能性がある。完全な中止は考えにくいので、次のいずれかの大きな変更があると推測している――観客数の極端な制限または無観客化、開催期間の短縮、1、2年後への延期だ」(ハリス氏)。

一方、アメリカでは、コロナウイルスの大流行が保健衛生問題と同時に政治問題にもなっている。とくに、トランプ政権の不手際と指導力の欠如を指摘する声が少なくない。3月11日夜のトランプ大統領による国民向けの声明によって、その悲しい現実が裏付けられた。彼の声明はコロナウイルスの危機を「外国人」のせいにしようと試みたが、後から修正しなければならなかった。

また、広範な地域におけるウイルス検査の不足や、この危機で大きな影響を受けている人々への経済的補助といったさらに重大な問題については言及されていなかった。

保守派メディアからも批判の声

こうした中、保守派のウォール・ストリート・ジャーナルですら、トランプ大統領の声明について翌日の社説でこき下ろした。大統領は「コロナウイルスを深刻な公衆衛生問題というよりも、政治闘争上の新たな好機と考えているように思われる」と同紙は書いている。

さらに同紙は、感染テストキット配備の不手際や経済対策の後れに始まって、危機対策を専門家に委ねようとせずに「概要説明のたびにしゃしゃり出てきたり、自分がよく知りもしないことについて推測でものを言ったり」という行動ぶりに及ぶまで、トランプ大統領の指導力の欠如を、その表現をオブラートに包みながらも徹底攻撃していた。

13日には、トランプ大統領は国家非常事態宣言を出し、ウイルス検査が以前報告していたほど広く行き渡ってはいないということを認め、仕切り直しを図った。一方、現場ではここ数週間で大幅な動きがあり、州および市町村レベルの行政機関や民間団体の指導のもとで、コロナウイルス感染拡大を鎮静させるための抜本的な方策がとられ、大規模な一般向けイベントのほとんどが中止され、大学や公立学校が休校となっている。

安倍首相や日本政府の対応ぶりに対するアメリカの見方はほんの少しだけ上向いている。日本政府によるダイヤモンド・プリンセス号の対処方法、とりわけ、その乗客と乗務員をすぐに下船させてウイルス検査を行ったうえで陸上の隔離施設に移すということをせず、船内にとどめていたことについて各方面から非難を受けた。

先ごろコロナウイルスに感染した乗客と乗務員を乗せた別のクルーズ船がここサンフランシスコ湾地区に入港したとき、日本の経験から学んだことが生かされることとなった。

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