トランプ後も変質続く「アメリカ流同盟関係」 「日米同盟一辺倒」はどこまで維持できるか

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トランプ氏が大統領に就任して半年後の2017年7月20日、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、コーン国家経済会議委員長の3人が示し合わせてトランプ大統領を国防総省に呼んだ。アメリカ第一主義にこだわるトランプ大統領に国際社会との協調の重要性を説き、主要政策の変更を促そうとしたのだ。

マティス国防長官らは「ルールに則った民主主義の国際秩序」がアメリカにどういう利益をもたらしているかを説明し、自由貿易体制やイランの核合意などの重要性を説いた。しかし、トランプ大統領は彼らの主張にことごとく拒絶反応を見せた。

話が米韓同盟に及ぶと、トランプ大統領は「35億ドル(約3700億円)、兵員2万8000人だぞ」とアメリカの負担を挙げ、「駐留する理由がわからない。全部こっちへ呼び戻せ」と大声を出したという。そして、ホワイトハウスに戻る車中で補佐官らに、「彼らはビジネスのことがまったくわかっていない。誰かを守ることばかり願っている」と批判した。

同盟関係の本質を理解できない大統領

このエピソードは、トランプ大統領が一国の安定や繁栄のために重要な役割を果たす同盟関係の本質をまったく理解していないばかりか、国家関係さえもビジネスと考えていることを明らかにしている。

トランプ大統領のこうした言動について、大統領選における民主党の最有力候補に浮かび上がってきたバイデン・元副大統領は「まるで補償金を取り立てる暴力団のように振る舞い、同盟を破壊に向かわせるような態度をとった。彼のせいで同盟関係がお金の議論に置き換えられてしまった」(「フォーリン・アフェアーズ リポート」2020 NO.3)と酷評している。

今日、同盟関係というのは単にお互いを第三国の軍事的脅威から守るためのものという単純なものではない。日米安保条約が明示しているように、互いに守るべき価値と実現すべき目的を共有し、そのために協力し合う、幅広い意味を持つものになっている。

日米に限らず、米韓やアメリカと欧州諸国との同盟関係も、自由、民主主義、市場経済などという価値を共有し、そのために協力し合うのが本来の同盟の姿である。ところがトランプ大統領の言動からは、同盟の本質を理解している気配はうかがえない。外務省幹部が自慢していた共同声明は、今やまったく意味を持たない紙切れになってしまったも同然だろう。

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