「10年バブル崩壊」の第1幕はそろそろ終わる 「相場のうそつきたち」のうそに耳を傾けよう

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一方で、企業収益で株価を比較的容易に説明できることがあるとすれば、それは平時のことであって、投資家のセンチメント(心理状態)が一定の場合、つまり穏やかなときだけだ。今はパニックの話をしているのだから、この動きが収まるのに、収益は関係がない。

とにかく、彼ら、つまり、自分が専門家でも関係者でもない、ということを自己認識していない「もっとも駄目な専門家」のことは無視しよう。彼らの言うことは、まさにノイズ、ノイズトレーダー以上に「ただの雑音」だ。

そして、いまこそ、「うそつきたちのうそ」に耳を傾けよう。なぜか。なるほど、彼らの悲痛なまでの叫びは、事実、解釈、分析としてはありえないまでのうそである。だが、「彼らの願望の吐露」だと思えば、これほどの真実はないからだ。投資家に立場が近い人々の願望の真実が観察できる、これほど素晴らしいチャンスはない。

彼らの発言を注意深く聞いてみよう。彼らが「諦念の極」に達したとき、それが相場反転のサイン、兆候だ。もう「守るもの」もなくなって、諦め切ったときだ。ここで「もはや守るものがない」、ということは、「売るものもなくなったとき」だ。

このとき、売っているのは、煽って最後のひと稼ぎをしようとしている「相場荒らし」のトレーダー、火事場泥棒のトレーダーたちだけだ。こういう人たちだけになると、乱高下も機械的、あっさりしたものになってくる。売るものが少なくなれば、下がりにくくなる。仕掛けだけの売買では乱高下は続かなくなるし、仕掛け人たちも儲からなくなるから、仕掛けもやめる。

「10年バブル崩壊第1幕」はまもなく終わるかもしれない

では、そういう状況になる気配は、どのように現れるか。

ポジショントークの株式関係者たちが「反転のきっかけが見えない」などといった本音が聞こえるようになったら、あからさまに「何がどうなれば反転のきっかけになるかわからない」、というようなことを吐露したら、買いの準備をしよう。

そして、そのような状況の中で、明らかな事実として、プラスの材料が出てきたら、そのときこそ買いに転じる時だ。今は、もう少し、それを待ち続けるしかない。

ただ、もし早ければ来週(16日)あたりから、その気配が感じられるかもしれない。それは短期の反転であり、過去10年の上げ相場の調整が終わったわけではない。それでも、この約2カ月の新型コロナウイルスをきっかけとした暴落の局面がいったん終わる可能性がある。

さらなる長期に関しては、筆者としては、長期停滞かつ緩やかな右下がり相場となり、「ソフトバンクグループバブル」「ユニコーンバブル」が崩壊したときに、もう一段のバブル崩壊があると考えるが、それは新型コロナ暴落局面とは別の「10年バブル崩壊第2幕」である。その前に、まずは今回の第1幕が下りることになる。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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