「バイト稼ぎすぎ」の大学生が親にかける大迷惑 思わぬところでたっぷり税金をとられるかも

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ただし問題は、大学2年生で19歳の子どもがいるだけでAさんは特定扶養控除を受けられる、というわけではないことです。その子どもは年間の給与収入が103万円以下(合計所得48万円以下)という条件付きなのです。

Aさんの場合、息子が年間120万円も稼いでしまったので特定扶養控除を受けることができなくなりました。103万円以下だったら10万8000円も得をしたのに……。

一方、社会保険面では、年収130万円以上で被扶養者は社会保険の扶養から外れて自ら保険料を支払う必要が出てきます。Aさんの息子も130万円以上稼ぐと自分自身で国民健康保険料を納めることになりますが、今回は超えていないので大丈夫でした。

でも、Aさんは会社の「家族手当」の支給がなくなってしまいました。会社によって家族手当の制度は異なりますが、Aさんの会社では、年収103万円以内の22歳未満の子どもにつき月額5000円(年間6万円)の支給があります。息子が19歳ながら120万円稼いだことで、結局Aさんは年間16万8000円の手取りが減る羽目になったのです。

稼ぎすぎると年金の「特例制度」も利用できない

子どもが稼ぎすぎると、国民年金保険料の納付にも影響します。国民年金は20歳になれば強制加入ですが、学生については、在学中の保険料納付が猶予される「学生納付特例制度」があります。厚生労働省によると、この制度を申請している学生の割合は65.3%です(2017年)。滞納者が9.1%いますが、学生納付特例を申請していない、あるいは申請できないケースなのかもしれません。この特例を申請できないケースには、子どもの稼ぎも関係していると思われるのです。

申請する前年の本人所得が118万円、給与収入で180万円を超えると、特例自体を利用することができないからです。アルバイト収入で180万円ということは月15万円です。

例えば時給1000円で月150時間、週当たり37.5時間になります。フルタイム契約のパート勤務と同レベルですから、該当する学生は少数かもしれませんが、最近ではアルバイト(雇用勤務)以外で稼ぐ学生が増えています。プログラミングのスキルを持つ理系学生などがアプリ開発を手がけたり、クラウドソーシングで仕事を受託したり、雇用されずに稼ぐケースも少なくありません。実際、筆者の知人の子どもは、eスポーツの大会で賞金を獲得し、稼ぎを増やしていました。

アプリ開発やプログラミングの仕事を受託した場合は雑所得、eスポーツなどで賞金を獲得した場合には一時所得になりますので、アルバイトなどの給与収入とは税金の計算が異なります(これら所得については事業ではなく趣味レベルで行うものと想定しています)。

例えば、雑所得では、収入から必要経費を差し引いた額が118万円を超えると、学生納付特例を利用することができなくなります。また、一時所得では、それを得るためにかけた金額から、特別控除額を差し引いた額が118万円を超えた場合、やはり特例を利用することができません。大学生であっても成人していれば、毎月、国民年金保険料を自ら払う必要が出てくるのです。

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