儲かるYouTuberに巨額広告マネーが流れ込む 嵐や宮迫も参入、地上波テレビをしのぐ必然

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ただし、伸び盛りのYouTube広告ではあるが、現場では深刻な悩みが生じている。「市場拡大に広告枠の供給が追いついていない。めちゃくちゃな動画広告表示が目につくようになった」と別の広告代理店デジタル担当は懸念する。

YouTubeを視聴すると、動画の冒頭との間に広告が表示される。広告を6秒表示後にスキップできる「バンパー広告」のほか、広告を最後まで表示する「強制視聴型」、広告をスキップできる「トゥルービュー型」の3種類がある。広告をスキップする視聴者には、バンパー広告を表示するなど、アルゴリズムで設定されている。

「最近は1つの動画にバンパー広告が2回連続で出てくる場合があるが、これは限りある広告枠を効率よく活用するために編み出した苦肉の策だろう。長尺の30分動画に挟みこまれる広告量もすごく増えている。グーグルは大量の広告をさばくことに苦労しているようだ」(前出の別の広告代理店デジタル担当)

グーグルもコンテンツの充実化に向けて、YouTuberを増やす施策を打ってきた。優良なコンテンツが増えれば広告枠が増えるからだ。トップYouTuber限定で使える本格的な撮影スタジオを無料で提供するほか、YouTuberと企業とのタイアップや物販などの副収入も禁じることなく支援するスタンスだ。YouTuberが「高収入」で「夢のある職業」、というイメージが定着すれば、ますます参入者も増えてくる。

ミドル層を狙い、企業とグーグルが接近

企業側が直接グーグルにYouTuber選定の相談を持ちかけることも珍しくない。「担当企業のYouTuber企画をグーグルの担当者経由で知ったことがある」とあるデジタルメディアプランナーは苦笑する。

数年前からは過激な動画を排除するなど、コンテンツへの規制を強めることで、プラットフォームの健全化にも努めてきた。その結果、ナショナルクライアントと呼ばれる大企業からの広告は、ほぼ出そろっている。彼らが割く広告予算は増える一方だが、そのスピードに合わせて広告枠を増やしていく必要がある。

中でも、30~40代ビジネスマンを対象にした動画コンテンツは少ないため、広告の人気が集中しやすい。「広告再生単価は平均0.1~0.3円だが、ニュースや時事解説に0.6円など、上がりやすい傾向にある」(調査会社ユーチューバーNEXTの岡野武志代表)。これから一攫千金を狙い、大人向けのコンテンツが増えてくることは、想像に難くない。

前出の岡野代表は「2020年は芸能人や専門家、文化人の参入が増えてくる。ニュース、マンガ、バラエティー、本の内容の焼き直しなど細分化が進む」と予測する。コンテンツの多様化によって、YouTubeがますます活性化することは間違いなさそうだ。

今のところ、YouTubeに匹敵する、強力な動画プラットフォームは存在しない。魅力的なコンテンツ、巨額の広告マネー、そして老若男女の視聴者がYouTubeにのみ込まれていく流れは、もう誰にも止められない。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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