ついに株式市場の「化けの皮」が剥がれ始めた これから個人投資家はどうすればいいのか

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それは、株式市場を信じないことであり、為替、金利市場を信じることであり、原油市場を注視することである。

なぜか。

まず、債券市場は、株式市場が理屈抜きのギャンブラー、狩人が多いのに対して、債券市場は合理的で理屈っぽい分析的な投資家が多いからである。これは、前者がキャピタルゲイン狙いで、後者がインカムゲイン狙いであることが大きく関係している。

前者はリスクをとって何ぼ、後者はリスクコントロールを最優先にする投資手法であるからである。インカムゲイン(保有資産に応じてもらえる利益)狙いなので、大きく元本が下落してしまっては元も子もないから、「下方リスクシナリオ」に対しては、正確に、時には過敏に反応するのである。

株式市場を信用せず、為替や金利市場を信じよ

しかし、より重要で、本質的、直接的な理由は、原油、為替はほとんどが先物市場であり、株式(部分的に債券も)は現物市場が少なくとも半分を占めるからである。

つまり、長期保有の投資ではなく、ポジションを取ることによって将来を予想するトレーダーであるからである。現物でないからポジションの整理、転換は簡単である。だから、危機が来れば直ちに危機に合わせてポジションをチェンジすることができる。損失が出ることよりも、すぐに次のポジションで利益を出すことが優先される。これにより、先物トレーダーが支配する市場では、情報は直ちに正確に、厳密に言えば、投資家、トレーダーたちのこれまでのポジションとは独立に投資行動が取られる割合が高い、ということだ。

サンクコスト(=回収できない費用)に縛られる、買った値段に縛られて塩漬けにしてしまう、という行動ファイナンスにおける個人投資家のノイズ的な行動と同じであるが、ここでのプロ(機関投資家など)の株式投資家としては、そのバイアスが間違っていると分かっていても、すぐには現物のポジションを落とせない(売り切れない)ために、ダメージを少なくするために、情報を短期にはあえて反映させないように、あるいは反省しないように願うのだ。

今後しばらくは、株式市場は信じず、為替市場や金利市場や、原油市場を注視する。もし、金利と株式が理論とは逆に動いた場合には、金利、債券市場を信じるのが正しい戦略だ。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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