「誰と生きたいか」考えない人に欠けている視点 「どう生きたいか」なんて重要な問いではない
伊藤:とにかく足元の「must」を全力でこなして、経験を積むことで、失敗を繰り返しながらも、できること、つまり「can」が次第に増えてくる。そうなって初めて、「これだ!」という「will」に近づけるものだと思うんです。
ムーギー:これは多くのくすぶっているビジネスパーソンに伝えたいメッセージですね。「オレのやりたいことって何だろう?」と悶々としながら、何もしない人って多いですからね。
今はとくに売り手市場で、自分が何をやりたいかなんて考えずとも就職・転職できてしまうだけに、モラトリアムというか、迷う人がものすごく多くなっていると思います。ちなみに、伊藤さんは銀行員時代にプラスで働きたいと思っている自分に気づいて、転職されたということですが、何がきっかけだったんですか?
誰に共感して、誰と働きたいか
伊藤:プラスのオーナー(会長兼社長)、今泉嘉久さんの魅力にひかれたことに尽きますね。例えば、今でこそ「顧客ファースト」が当たり前のように言われていますが、今泉さんは15年以上前から、それを明確に打ち出していたんですよ。
ムーギー:チャンスをつかむための重要なポイントを3つ挙げていただきましたが、「この人と一緒に働きたい!」と思える人との出会いも、チャンスをつかむうえでの大きな要素になりますよね。
伊藤:確かにそうですね。銀行からプラスに転じたときは、今泉さんとの強烈な出会いがあった。プラスからヤフーに移ったときには、前社長の宮坂学さんからの誘いがあった。今、キムさんに言われてあらためて気づいたんですけど、誰に共感するか、誰と働きたいかという視点で考えて動いたことは、結果としてよかったわけですね。
ムーギー:人間は何万年も前から、家族や周りの人たちと仲良く暮らせたらそれでいいという感じで生きてきたわけで、「お前はどう生きたいのか」と問われるようになったのは、せいぜいここ数十年くらいのことですよね。
そもそも「どう生きたいのか」と考えることは、大半の人間にとっては、本能に反したことだと思うんです。人は結局、「何をしているか」よりも、「どんな人と、どんな状況でしているか」というほうに、意義や幸せを感じられるものだと思います。
伊藤:「誰と」もそうですし、「どんなふうに」も大切ですよね。人と環境がそろうと、やりたいことにも限りなく近づいていくものですし。