「誰と生きたいか」考えない人に欠けている視点 「どう生きたいか」なんて重要な問いではない

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伊藤:おっしゃるとおりです(笑)。好奇心が旺盛かどうかは、先天的な資質だと考える人も多いですけど、後天的に身に付けることもできるんですよね。

ムーギー:チャンスをつかむために重要なポイントの1つは「好奇心」だと。では、2つ目は?

初対面ながら意気投合したムーギー氏と伊藤氏(写真:PHP研究所提供)

伊藤:2つ目は、何度もやり続けて、経験を蓄積することです。アップルの創業者、スティーブ・ジョブズが言うところの「Connecting The Dots(点と点をつなぐ)」のドット、つまり「経験」をためることが必要だと思います。

私自身、孫正義さんに初めてプレゼンテーションをしたときには、300回以上の練習を重ねました。私は銀行員時代にうつ状態を経験しまして、仕事では人より遅れをとっているという思いがあったんです。そんな人間がほかの人と肩を並べるには、10回、20回の練習ではダメだ、とにかく数をこなさなければと思っていました。

今も52歳にして英語の勉強を始めたのですが、例えば、サイモン・シネックさんがTEDでプレゼンした「How Great Leaders Inspire Action(優れたリーダーはどうやって行動を促すのか)」での「ゴールデンサークル」の話も、1度聞いただけではよくわからなかったんです。でも、30回、40回と繰り返し聞くうちに、わかってくるんですよね。

Willやビジョンは繰り返しているうちにわかるもの

ムーギー:同じことを繰り返すときのモチベーションの湧かせ方は、人によっていろいろな方法があると思いますが、それをすることによって、自分のよりよい姿につながることを想像するなど、意義づけをすることも大切だと思います。

伊藤:なりたい姿、「will」やビジョンといったものは、最初から明確にはなっていなくて、何度も繰り返しやっているうちにわかってきて、近づいていけるものだと思うんですよ。初めは薄らぼんやりしているかもしれないし、実は自分が思っていたものとはまったく違うものかもしれない。

ムーギー:「やりたいことがわからない」「見つからない」と悩んでいる人の多くは、サンプルやデータがないのに、法則を見いだせと強要されているようなものなんですよね。それは当然ながら無理な話で、とにかく何かやってみないことには、好きなことも、やりたいこともわからんだろうということですよね。

伊藤:おっしゃるとおりです。まずはドット、経験を積むことが、2つ目のポイントですね。そのときによく、「一歩を踏み出せ」「とにかくやれ」と言われたりしますけど、何をしたらいいのかわからないという人も多いと思います。それならば、足元にあるやるべきこと、「must」から始めるというのが、3つ目のポイントですね。

ムーギー:3つ目のポイントは、やりたいことがない、わからないなら、やるべきことにフォーカスすることだと。これも確かにそうですよね。

次ページ全力で足元の「must」をこなすうちに見えてくるもの
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