キヤノンがプリンタで大型買収、自前路線から転換 

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キヤノンがプリンタで大型買収、自前路線から転換 

自前路線を走ってきたキヤノンが勝負を仕掛けた。16日、同社は欧州最大のプリンタメーカー、オセ社(オランダ)を買収すると発表。TOB(株式公開買い付け)による買収総額は約1000億円となり、キヤノンのM&Aとしては過去最大となる。

買収の背景にはオフィス用事務機の需要飽和がある。今や先進国を中心に、オフィスには複合機(プリンタやファクスなどの機能を備えた多機能型複写機)が行き渡っており、目下の不況で買い替え需要も鈍い。

そうした中、事務機各社が新たな成長領域と位置づけるのが、「デジタル商業印刷機」と呼ばれる業務用の印刷機だ。オセも欧米でこの印刷機を展開する。出力速度や色の再現性に優れ、カタログやダイレクトメール(DM)といった業務用の印刷に向く。顧客情報に合わせ、1枚ずつ違う内容の印刷物も作成できるため、北米などで需要が拡大。調査会社ガートナージャパンによれば、今後4年間で世界市場は約1000億円程度膨らむ見通しだ。

この分野で、断トツの世界シェアを握るのは古参のゼロックス。それを追って2004年にコニカミノルタホールディングス、07年にキヤノン、昨年にはリコーと大手各社が乗り入れた。

だが、キヤノンが主に展開するのは出力速度が速くても毎分135枚程度の中低出力機。一方のオセは毎分数百枚を印刷できる高速機を得意とする。「高速の製品を持っているのは世界でもオセとゼロックス、米ヒューレット・パッカード、米コダックくらい。キヤノンにとっては効果的な買収」(ガートナージャパンの三谷智子主席アナリスト)。

こだわりより「実」

これまで複写機やインクジェットプリンタなど、自社開発の独自技術にこだわりを見せてきたキヤノン。今回の買収は、そのこだわりよりも「実」を取りにいったと言えるだろう。

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