佐藤優「一般職を選んだ方が幸せかもしれない」 総合職の多くが一般職に、働き方改革の狙い

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さらに勘繰るなら、今回の改革は総合職的に働く人たちを一般職化するための布石ではないかということです。多くのビジネスパーソンが9時~5時の労働が基本になります。有給休暇をきっちりと取り、すり減らない範囲で労働力として働かされます。そして一部の超エリート層、幹部候補だけが隠れた違うルールで仕事をする。

働き方改革の柱の1つである「非正規雇用と正規雇用の賃金格差の撤廃」も、実質は正規雇用の賃金が非正規雇用の賃金に近づくということになるかもしれません。ベースアップや昇給がなくなり、賃金が非正規雇用のほうに引っ張られるという下方圧力がかかるでしょう。

あらゆる業種で賃金の引き下げが始まる

今後、あらゆる業種で賃金の頭打ち、あるいは引き下げが起きるかもしれません。そうするとどうなるか? 足りない分を副業で稼ぐという時代が来るでしょう。むしろそうして収入源を複線化してもらったほうが、企業も自分たちの負担が少なくて済みます。

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つまり、実質的に正規社員の非正規化であり、労働力の流動性が高まることになります。今の状態が続けば、おそらくそのような働き方になる時代が来ます。

本業だけでは多くの人は生活が厳しくなる。副業が当たり前の時代がやってくるのです。今後は、一部高額サラリーをもらう「超エリート層」と、最低賃金より少し上位の大多数の「一般職的社員」に二極化するでしょう。

厳しい時代が到来するのは避けられません。国家も大企業も、そしてお役所も、国民一人ひとりの健康や幸せを願うというよりも、国家や企業としての活力をどう維持していくかが最大の関心事なのです。それゆえ彼らは常に現実を、労働力や経済力というマクロな数字=抽象的な概念に置き換えて考える体質と癖を持っています。

ですから国民一人ひとりのミクロな利害と、国家としてのマクロな利害がぶつかった時は、国家は迷わずマクロな視点、マクロな利害を優先します。働き方改革で働く国民を幸福にするというのは、あくまでも建前であることを肝に銘じておく必要があるのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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