在日米軍移転はなぜ必要なの?(1)~アメリカの事情~

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米軍再編の本当の狙い

 世界レベルの米軍再編については、もう既に在韓米軍の1万2000人の削減、在独米軍の2万人削減などが始まっています。この5月に決まった日米間の米軍再編最終報告によって、世界規模の米軍再編計画も完全に実行段階に入ることになります。

 米国は4年ごとに行う防衛戦略見直し「QDR:Quadrennial Defense Review2005」において、米国が直面する脅威を下図のように4つに分類しています。



 アメリカは表向き、これらの脅威に対抗するために軍を再編すると言っていますが、私はその裏に、どんどん増える軍事予算を削減するという目標もあると見ています。

 昨年時点で、アメリカは主要基地の33を閉鎖し、29基地の兵力を削減するとしていました。基地閉鎖と兵力削減でアメリカの軍事予算は、年間50億ドル(約5000億円)削減されると算定されています。「米軍再編は、節約のため!」と考えると、アメリカがグアム移転の費用を、できるだけわが国に支払わせようとしていることも理解出来ますね。

日本の進むべき道

 わが国は、図中にある伝統型脅威と破滅型脅威に対応するため、在日米軍再編や日米協力の下でミサイル防衛を進めようとしています。ただ私は、ノーベル賞受賞者であるアマルティア・セン・ハーバード大学教授が指摘するように、「テロの根本にあるのは、貧困と教育の不足」であり、わが国は、米国のテロ対策と連携した形で貧困や教育支援を行ってはどうかと考えています。つまり、落ち着き始めたイラクに対して支援を行うことにより、テロの撲滅を図るという考えです。

 また、わが国は、唯一の被爆国としてのNPT(核不拡散条約)、CTBT(包括的核実験禁止条約)等を強力に推進していく義務があると思います。昨年からNPTの活動は止まったままであり、核兵器の不拡散に関して、わが国の果たせる役割は大きいと考えます。 また、核不拡散をアピールすることにより、新しい大量破壊兵器の拡散防止の枠組みであるPSI(拡散に対する安全保障構想)を推し進める米国との連携を強化できる上、日本の国際社会でのプレゼンスを高めることもできるはずです。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。


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