BBCの「受信料廃止」はどこまで現実的なのか 問われ始めた有料「公共放送」の存在価値

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「BBCの報道にはつねにイライラさせられるし、BBCはばかげたこと、愚かなことをやると思う。それでも、BBCは私たちが守るべき組織だ。この見解は大部分の下院議員が共有すると思う」(コリンズ議員)

BBCについての超党派政治グループを率いるヒュー・メリマン議員は、「BBCを攻撃対象にするべきではない」と言う。「もしBBCが沈めば、保守党は次の選挙で国民の支持が受けられなくなる」と警告した。

サンデータイムズの報道があった翌日、官邸の広報官は報道陣にこう述べている。「一つひとつの番組をどうするかはBBCが決めることだ」「これまでにも、つねに首相は受信料制度の将来について『検討するべき』と言っている」として、特筆するべきことはない、という姿勢だ。

「受信料制度の廃止」「チャンネル数の大幅削減」という提案は、現時点では賛同者よりも反対者のほうを多く生み出してしまったようだが、それではBBCの将来は安泰かというと、そうではない。

BBCの台所事情は?

BBCを悩ませるのは、「お金(の不足)」、そして「メディア環境の激変」だ。BBCの活動の約75%は、受信料収入(2018年は約37億ポンド=約5300億円)による。残りの約12億ポンドは商業活動や交付金である。受信料の支払い世帯は約2620万(ちなみに、イギリスの人口は2018時点では約6600万人)で、支払い率は90%以上だ。

問題は、予算削減への圧力だ。政府は緊縮財政の一環として、BBCにも公的組織としての予算削減を課してきた。BBCは、2022年までに8000万ポンドを削減する必要がある。

1月29日、BBCの報道部門の統括者フラン・アンワース氏は、部門内で450人の人員削減や複数の番組停止を発表した。「BBCは視聴方法が変わっている現実に直面する必要がある」(アンワース氏)。「次の時代」のために、ニュース部門を変える必要があるという。BBCは「伝統的な番組放送のほうに資金を使いすぎ、デジタル配信には十分に投資してこなかった」。

BBCの番組見逃し視聴サービス「iplayer(アイプレイヤー)」は人気となったが、Netflixを始め、アマゾン、アップルなどが有料動画サービスを展開し、BBCの強力なライバルとなっている。高品質のドラマ、不偏不党のニュース、オリジナルの番組作りを義務化されているBBCは、厳しい状況にいる。

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