BBCの「受信料廃止」はどこまで現実的なのか

問われ始めた有料「公共放送」の存在価値

BBCの受信料制度は、2027年までは維持されることが決まっている。これはその存在と業務を定める「王立憲章」(女王の勅許)の規定による(現在の期限は2017年から2027年)。

しかし、無料・有料の動画サービスが人気となってメディア環境が激変しているため、受信料制度を2022年に見直すことを決めていた。そこで今、BBCの受信料制度が俎上に載ってきたというわけだ。

イギリス政府がBBCを「敵視」するワケ

なぜ保守党政権はBBCを攻撃しようとするのだろう?

まず、保守党政権に限らないが、権力者の責任を鋭く問うジャーナリズムを実行するBBCはどの政治勢力にとってもやっかいな存在だ。

保守党は、「小さな政府」の実現や市場経済の振興を支持する。受信料を一種の「公的資金」と見なすため、国民から得た資金によって巨大化するBBCを「イデオロギー上、受け付けられない」とイギリス・リーズ大学シルビア・ハーベイ教授は言う。

とくにジョンソン政権や保守党右派を刺激するのは、BBCの報道姿勢だ。BBCが「左派的」「リベラルすぎる」、欧州連合からのイギリスの離脱劇では「残留派寄りだ」、そして首相をはじめとする離脱派の意見を「十分に報道しない」「偏向している」として非難してきた。

こうした保守党右派勢力を代表する1人が、先のウィッティングデール議員だ。サンデータイムズの官邸筋によれば、ウィッティングデール氏が主導するBBC改革作業のミッションは「BBCを攻撃しろ」だという。

しかし、BBCの受信料制度を廃止するべきという提案は、BBC擁護の声に次第にかき消されていった。

保守党内さえからも、反発の声が噴出。下院のデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会の元委員長でメディア事情に詳しいダミアン・コリンズ議員は受信料制度の廃止やチャンネルを大幅に削減すれば「公共放送にリスクをもたらす」「馬鹿げた提案だ」とBBCの取材に述べた。「総選挙の際の公約にも入っていない」。

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