ユーチューブを凌ぐ、ネットフリックスの今 様変わりした、米国人の映画鑑賞方法

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そして、シリーズ番組は、何もテレビ局だけの独断場ではなくなった。面白いものを探している視聴者にとって、もはやテレビとストリーミングサービスの差はほとんどないのだ。ネットフリックスにはコマーシャルもなく、コンテンツだけを提供するサービスとして、より純粋なファンに受けているのだ。

並みの能力しかない人材には、去ってもらう

ヘイスティングスは、大学在学中に起業するような昨今のネット世代より、一世代前の起業家と言える。メイン州の大学で数学を学んだ後に海兵隊に加入。さらに平和部隊に参加して世界各地を回り、スイスの高校で数学を教えていたこともある。

放浪を終えてアメリカに戻ってから、スタンフォード大学でコンピュータ科学を専攻。卒業後にソフトウエア会社に数年勤務してから、自身のソフトウエア会社も創業した。だが、CEOという企業トップにいる間は、ずっと座りの悪さを感じていたようだ。

だがヘイスティングスは、ネットフリックスが会社としてどんどん拡大していくにしたがって、自分なりの会社像を確立していった。それは、パフォーマンスの優れた人材が作る、ルールのない企業だ。会社が大きくなっても官僚的で硬直的になることを防ぐには、決まりがなくても自主的に能力を発揮する人材で固めればいい。

それをヘイスティングスは「自由と責任」を持つ社員が働く大企業が、迅速にフレキシブルに動き続ける像としてイメージしている。そのため、並みの能力しかない人材には、気前のいい退職金まで出して去ってもらうという方法を採っているという。そうすれば、首を切るほうにも罪悪感が残らない。

イノベーションを生むためのイノベーティブな企業の姿を練り出した彼の考えは、ネット上でも公開されている。

 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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