1社に尽くす日本人の「一所懸命」を変える方法 「人生のセーフティーネット」はこう作る

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尾原:物心ついたころからスマホやSNSが当たり前に存在していたZ世代(1990年代後半以降生まれ)は、複数のアカウントで複数のアイデンティティーを使い分けることが当たり前。問題はそれ以前の世代ですね。

あえてイグジットするとか、複数アカウントを持つということをやらないと、昔の「一所懸命」のフィクションに縛られかねません。

山口:複数アカウントを持つことは、いくつかの人生を同時に生きるということですよね。物理レイヤーでは「○○会社の□□」でも、架空レイヤーでは「鉄道好きの△△」として認知されている。堂々と架空の人格を楽しめるのはすばらしいことで、メンタルヘルス的にもいいはずです。

「喜怒哀楽」をベースに考えよう

尾原:それからもう1つ、オピニオンでもイグジットでも大事なのは、対象へのリスペクトだと思う。敵意や憎悪からは、何も生まれません。

山口周(やまぐち しゅう)/1970年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)など著書多数(撮影:尾形文繁)

GAFAのようなITプラットフォームであれ国家であれ、僕たちの自由を支えてくれているわけです。まずそのことに感謝して、なぜそうしてくれるのかを考えながらちゃんと監視もして、もし自分のフェアネスに照らして間違った方向に行きそうなら「ノー」と言う。僕が尊敬するプロノバ社長の岡島悦子さんの言葉を借りるなら、「Love but Say NO」の姿勢が大事だと思います。

山口:「ラブ」は本当に大事。もう少しかみ砕いて言うと、デジタルでいろいろなことができる時代だからこそ、「喜怒哀楽」をベースに考えてもいいと思う。

僕がものを書いたり発信したりしているのは、義務感からではなく、単純に好きだから。会社を辞めてまで長く続けられるのは、そのためです。

プロ棋士の羽生善治さんは、よく「最後に勝つのは長く続けている人」という話をされています。ではどんなことなら長続きするかといえば、単に才能やセンスの問題ではないですよね。そのことに感情が動くかどうかが大前提だと思います。

『アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

何かを5年も続けていれば、どこかでパッと花開く瞬間があります。ただし、今すぐ会社を辞めろという話ではありませんが(笑)。

尾原:長く続けることは、必ず何らかの形で伏線になりますよね。それでお金が稼げるかもしれないし、心の拠り所になるかもしれない。

そのために僕たちが持てる武器は2つある。1つはテクノロジー。ITプラットフォームも武器として振り回しますが、僕たちも使えます。そしてもう1つは哲学。これは先人たちが悩んだ末に獲得した賜物なので、まさに「武器になる」。拝借しない手はないですよね(笑)。

結局、今は誰にとってもすごくいい時代なんです。それを思いっきり享受して未来を楽観的に描きながら、世の中や自分自身について深く考察を続けることが大事なんじゃないでしょうか。

(構成:島田栄昭)

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