1社に尽くす日本人の「一所懸命」を変える方法 「人生のセーフティーネット」はこう作る
山口:13回はなかなか多いですね。でもそれは、どれだけ多くの友達を作れるかという話でもあると思うんです。いい友達に巡り合うコツは、単純に言うと「出会った人の数✕(カケル)気が合う人の出現率」という関数です。
出会う人の数を増やすには、転職が有力ですよね。それから気が合うかどうかは、自分の好き嫌いをはっきり出せばすぐにわかります。例えば「鉄道が好きだ」と表明して、周囲に同好の士がいれば仲良くなれますよね。
そうすると、どんどんネットワークができる。結局、そういう人たちが人生のセーフティーネットになるんです。困っているらしいから仕事を振ってやるかとか。いわゆる「社会資本」ですね。
複数アカウントのすすめ
尾原:友達を増やすという意味では、複数のアカウントを持つのもいい。例えば江戸時代には、「連」という趣味のコミュニティーがありました。もともとは俳諧の文化から始まったのですが、さまざまな分野で同好の士が集まり、創作したり遊んだりしていたそうです。いわばサークル活動のようなもので、身分も職業も無関係。だから本名ではなく、お互いに「号」と呼ばれる別名を名乗っていました。
今なら、こういうコミュニティーを作ったり参加したりすることはもっと簡単でしょう。現代の「号」であるアカウントを使い分けることで、自分のアイデンティティーも複数持つことができるんじゃないでしょうか。
複数のコミュニティーに所属すれば、「一所懸命」から解放されるので、オピニオンも言いやすくなります。それに特定のコミュニティーから無理にイグジットする必要もないですよね。自分の軸足を右から左に変えるだけでいい。
山口:複数のアカウントを持つのはいいアイデアですね。1つだけだと窮屈ですから。
かつてデジタル化が進む過程で、むしろアイデンティティーは1つに集約されそうになりました。
それより前の時代なら、例えば学校の教室ではいじめられても部活動では中心メンバーだったり、塾に行けば別の友達がいたりといった人もいたでしょう。
ところが携帯電話やLINEが登場したことで、どこにいてもつねにいじめられる状態になった。デジタルアイデンティティーが生活に深く侵入してくることで、逆にアイデンティティーを使い分けられなくなったわけです。
しかし今は、別のアカウントを作って管理すればいいだけですからね。