1社に尽くす日本人の「一所懸命」を変える方法 「人生のセーフティーネット」はこう作る

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

山口:13回はなかなか多いですね。でもそれは、どれだけ多くの友達を作れるかという話でもあると思うんです。いい友達に巡り合うコツは、単純に言うと「出会った人の数✕(カケル)気が合う人の出現率」という関数です。

出会う人の数を増やすには、転職が有力ですよね。それから気が合うかどうかは、自分の好き嫌いをはっきり出せばすぐにわかります。例えば「鉄道が好きだ」と表明して、周囲に同好の士がいれば仲良くなれますよね。

そうすると、どんどんネットワークができる。結局、そういう人たちが人生のセーフティーネットになるんです。困っているらしいから仕事を振ってやるかとか。いわゆる「社会資本」ですね。

複数アカウントのすすめ

尾原:友達を増やすという意味では、複数のアカウントを持つのもいい。例えば江戸時代には、「連」という趣味のコミュニティーがありました。もともとは俳諧の文化から始まったのですが、さまざまな分野で同好の士が集まり、創作したり遊んだりしていたそうです。いわばサークル活動のようなもので、身分も職業も無関係。だから本名ではなく、お互いに「号」と呼ばれる別名を名乗っていました。

尾原和啓(おばら かずひろ)/1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、サイバード、オプト、グーグル、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業などに従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に、『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『どこでも誰とでも働ける』(ダイヤモンド社)、共著に、『アフターデジタル』『ディープテック』(ともに日経BP)などがある(撮影:尾形文繁)

今なら、こういうコミュニティーを作ったり参加したりすることはもっと簡単でしょう。現代の「号」であるアカウントを使い分けることで、自分のアイデンティティーも複数持つことができるんじゃないでしょうか。

複数のコミュニティーに所属すれば、「一所懸命」から解放されるので、オピニオンも言いやすくなります。それに特定のコミュニティーから無理にイグジットする必要もないですよね。自分の軸足を右から左に変えるだけでいい。

山口:複数のアカウントを持つのはいいアイデアですね。1つだけだと窮屈ですから。

かつてデジタル化が進む過程で、むしろアイデンティティーは1つに集約されそうになりました。

それより前の時代なら、例えば学校の教室ではいじめられても部活動では中心メンバーだったり、塾に行けば別の友達がいたりといった人もいたでしょう。

ところが携帯電話やLINEが登場したことで、どこにいてもつねにいじめられる状態になった。デジタルアイデンティティーが生活に深く侵入してくることで、逆にアイデンティティーを使い分けられなくなったわけです。

しかし今は、別のアカウントを作って管理すればいいだけですからね。

次ページZ世代にとって複数アカウントは当たり前だけど…
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事