温暖化ガス「25%削減」は可能か--排出権取引&環境税で実効性ある削減策示せ

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排出はタダではない

環境と経済の両立は国際社会共通のテーマだ。排出削減と経済成長をともに達成するためには、これまでの何の制約もなく温暖化ガスを排出できる社会システムを改め、適切な炭素価格を設定するなど経済的手法を取り入れることが有効である。

さらに、排出削減にインセンティブを与え、それを元に再生エネルギーの大量導入、省エネ技術革新を先導していく必要がある。この抜本的な排出削減策として注目されるのがC&Tだ。

EUは05年にC&T型の排出権取引制度(EU-ETS)を導入、08年の取引額は919億ドル(約9兆円)に達している。13年以降の第3段階では、20年までの削減目標を05年比21%減、オークション割合を高めるなど削減水準が強化される。

排出削減に消極的な姿勢を取り続けてきた米国でも、州レベルでは実験的な取り組みが始まっており、09年初には一部の州でC&Tを導入、12年までに全米の半数弱の州が何らかのC&Tに参画する予定である。

ただC&Tは発展途上の制度であり、課題も少なくない。仕組みが複雑で、特に排出枠の設定では公平性と効果双方を導き出すことは容易ではない。先行したEUでも、幾度も軌道修正がなされている。また排出権価格は需要と供給で変動するので、企業は毎年どのくらいのコストがかかるか予見できない。そのため企業行動の制約要因となり、実際EUでは環境投資や研究開発が抑制される傾向が出ているという。さらに投機筋の参加などによってマネーゲーム化する危険性もある。

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