ボルネオで奇跡の復活「元名鉄特急」数奇な歩み

北アルプスから会津へ、そして南国の島へ

本数は山線のほうが多く、1日4往復(うち2往復は区間運転)あり、テノム渓谷を目指すバックパッカーの姿も見かける。とはいえ、日本風に言えば典型的な赤字ローカル線である。

公共サービスの一環である鉄道に収支云々を言うのは野暮なことであるが、このようなサバ州立鉄道に、なぜたった2両の日本製特急型気動車が渡ることになったのか、非常に不思議に思われるのではないだろうか。

サバ州立鉄道は老朽化した設備を大規模更新するため、2007年から2011年まで本線区間を全面運休した。

プッシュプル列車のメンテナンス中に代走として走る客車は元イギリス製の気動車。非冷房で窮屈なボックスシートと快適性はかなり落ちる(筆者撮影)

以前は軽便鉄道と言っても差し支えないようなイギリス製のマッチ箱のような気動車や、日本製の小型機関車がこれまた15m級の客車を牽引していたが、改良工事によって大型車両の入線も可能になり、中国製のプッシュプル列車(機関車+客車+運転台付きの制御客車の固定編成)が2本導入された。1日2往復の本数では十分な車両数である。

しかし、2011年にこのプッシュプル列車が踏切事故でタンクローリーと接触し、一部が炎上し使用不能になってしまった。そこで代替車両を用意する必要が生じたのである。

最初は1両だけで運転

プッシュプル列車はトイレ付きの2ドア・クロスシート車両であり、同様の設備水準の車両を調達するのはなかなか難しい。タンクローリーを保有する石油会社が賠償金を支払ったという話もあるが、予算が限られた中での車両探しであり、すでに引退した車両を含めて検討がなされたようである。

車庫で眠っていた頃の8502。後ろに8503も見える(筆者撮影)

そんな中、偶然にも条件が合ったのがキハ8500系「8502」「8503」だった、というわけだ。こうして2015年、この2両ははるばるボルネオ島に渡ることになった。

仲介した商社を通して専門家の派遣やパーツ類の供給もなされ、軌間1067mmから1000mmへの車軸の改造を含む再整備を行った上で、まず「8502」が2016年10月、タンジュンアル―ボーフォート間でデビューを果たした。

片側にしか運転台がない車両をどうやって1両で走らせたのかと疑問が浮かぶが、タンジュンアルではSL用の転車台で、ボーフォートでは使われていないデルタ線を介して方向転換を行うという、驚きの運転方法を取った。

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