大阪心斎橋に「夜だけ開く診療所」ができたワケ 左半身麻痺の精神科医が目指すもの

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「アウルクリニック」院長 片上徹也さん(撮影:渡邉智裕)

冒頭の吉田さんも、これまで別の病院に通っていたが、「2カ所ともお医者さんがカッチリしていて冷たい印象があった」と訴える。

「メンタル的に困っているときには、行くだけで緊張しちゃって。でも、ここの先生はかたくなくて、ふわふわっとしゃべりません? もともとそういう方だというのもあるんでしょうが、たぶんポリシーとして、フレンドリーに接しようとしてくださっている感じがします」

親子3代で通う患者さんも

会社員の清水里奈さん(仮名、39歳)は、親子3代でアウルクリニックに通っている。最初は2年半前、自分が仕事のトラブルでうつ状態になったのがきっかけだ。

「しんどかったので、ネットで検索して、いろいろ電話したけど、どこも何週間待ちとかで、ここしか受け入れてもらえなくて。病院って、どうしても抵抗があるけど、ここの先生はフレンドリーな感じで、親身になって聞いてくれるのがいいですね」

清水さん自身の症状は仕事を替えたこともあり、だいぶよくなったが、この日は高校2年生の娘を診察に連れてきた。青白い顔をした娘は、ずっとうつむき加減のまま黙っている。

「娘に関しては“知的な発育の問題ちゃうかなー”と先生はすぐ見抜いて、調べたらホンマに言うてたとおりでした。それが原因の1つというか、やっぱり学校で周りの子とどう接していいかわからんくなって、それでしんどくなって精神面がやられたんですね。

母はここの内科で更年期とか診てもらっています。病院が好きではないけど、私とやったら来ると言うので。夜、私の仕事が終わってから、2人を連れて来られるのがいい。そこは大っきいですね」

片上さんが夜間の、しかも精神科診療所を作りたいと考え始めたのは、まだ高校生のときだ。和田秀樹さんなど著名な精神科医の本を読んだのがきっかけだった。

「勉強できひん自分に悩んだんちゃいますか(笑)。両親が医者だから、常に選択肢としてはあったし、憧れもあったけど、ホンマに学年トップやないと医学部は無理なんで。医者になりたいとは、よう言わんかったです。

めっちゃ負けず嫌いだったから、悔しかったですよ。特に思春期は大学受験という大きな転換期を控えて、不安や抑うつがすっごく大っきかったと思います

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