大阪心斎橋に「夜だけ開く診療所」ができたワケ 左半身麻痺の精神科医が目指すもの

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「この1週間、10点満点でいったら、平均して何点取れそうですか?」

片上さんの問いに、吉田さんは考えながら返答する。

「7くらいかな。月、火、水曜くらいは被害妄想みたいになっちゃって、“自分が死んだら”みたいなことを毎日考えて、本当に疲れちゃって……。今は(波の)上なので、なんか元気すぎて、むしろいい感じです」

「でも上がったら、ドーンと下がると思うので、7割ぐらいで、それ以上、上がらへんようにしないと」

「はい。お薬を飲み忘れないようにします」

片上さんがアウルクリニックを開いたのは5年半前だ。診察は平日の19時から23時まで(火曜日を除く)。大阪市内でも夜間にやっている精神科はほとんどなく、これまで診たのは4000人以上。内科と皮膚科も併設しているが、8割は精神科の患者だ。

夜の精神科診療所を開くのに、あえてアクセスのいい繁華街を選んだのは、気軽に来てほしいからだ。

「普通の生活をしている人が、仕事や学校帰りに、フラッと入って、パッと何でも相談できたら、よくありません?」

軽い調子で口にするが、片上さんは朝9時から17時までは兵庫県加古川市にある精神科専門病院で常勤の医師として働いている。症状の重い認知症や統合失調症などの入院患者を担当。特急電車で1時間半かけて大阪に戻り、夕飯も食べずにクリニックに駆け込む毎日だ。

「ワーカホリックですよ!」

思わず突っ込みを入れると、うれしそうにぼける。

「おー、ヤバいじゃないですか。助けてください(笑)」

先生の魅力は「話しやすい」

実は、片上さんは27歳のとき発症した、くも膜下出血の後遺症で左半身が麻痺している。左足を引きずるようにして歩くことはできるが、左手はまったく使えない。

そんなハンディを感じさせない、ノリのよさと明るさが、片上さんの持ち味だ。

19時に開院すると予約の患者が次々と訪れる。クリニックは約6坪と狭い。奥にある診察室までの細長い通路に椅子が数脚置かれ、座りきれない人は外の廊下で待っている。風邪やインフルエンザで混み合う内科などと変わらない開放的な雰囲気だ。

待っている患者に「片上先生の魅力は?」と尋ねると、「話しやすい」という声が圧倒的に多かった。

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